悪いことが起こる時の不可解な前兆
これは、私が小学生の頃の話。
当時、悪いことが起こる前に、『身の回りのものに茶色い泥のようなものが付く』ことがあった。
泥なのに、甘い香りがするんだ。
例えば、いつの間にか筆箱の中にべっとりと付いていたりする。
その程度だと、私物が壊れたり、ケガをしたりするだけで済むんだけれど、一度だけ酷いことが起こった。
私が学校で借りた本が、一部だけピッタリと閉じた状態になっていて開けなかった。
誰かのイタズラ?と思って破らないように開いてみたら、見開きが茶色い泥で埋まっていた。
その瞬間、強烈な甘い香りがして、机の上も手も泥まみれになり、少しパニックになった。
私は急いで掃除をして、怖かったのでそんな出来事を放置していた。
するとその夜、幼い弟が突然倒れて救急搬送された。
原因不明の高熱で、家族も大学病院に行ったまま帰って来ない。
私は3日ほど一人ぼっちになった。
何かおかしいのは気づいていた。
ふと「あの泥まみれの本のせいじゃ?」と思って、月曜日に「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」と唱えて本を返したところ、弟の体調も良くなり、家族も家に帰って来た。
それ以来、泥は見ていないけれど、もう二度と見たくない。
・・・というより、『あの泥』は何だったんだろう。
(終)