中古の一軒家を買って1年が過ぎた頃

家

 

これは、中古の一軒家を買ってからの話。

 

住み始めて1年くらいが経った頃、間取り的に『家の中が1畳分くらい狭い』ことに気がついた。

 

とは言っても、住んでいたので壁を壊して確かめようとはならなかった。

 

それまで1年くらい普通に住んでいて気づいただけなので、おかしなことが起きるわけでもない。

 

ビルみたいに配管を通したりするスペースが広めに取ってあるのかな?でも壁を壊したら…みたいな展開がもしあったらやだね、と家族と話していた。

 

6月だったか、ジメジメした時期だった。

 

ちょうどそのスペースが隠れているんじゃないかという辺りの、廊下に面した壁にヒビが入り出し、だんだんと割れてきた。

 

私は気にしていなかったが、妻と娘が「ヒビ割れからクサい臭いが出てくる」と毎日のように言い始めて、それからは家の中でも変なことが起き始めた。

 

例えば、娘が何もない廊下でいきなり転んで足がぱっくり割れて何針も縫ったり、妻が風呂上りに貧血のように突然倒れて某エクソシスト映画のような痙攣を起こしたり。

 

「夜中に変な人影が家に出る!」と娘が言い始めた頃から、妻と娘は集団パニックみたいになってしまい大変だった。

 

ひょっとしてガスでも出てるのか?と思った私は、壁のヒビに鼻を付けてクンクンしてみるが、これといって臭わない。

 

それに、仕事で家にあまりいないからなのか、鈍感なのか、自分には何も起きない。

 

一度だけ、居間で家族と壁のヒビの話をしている時に、ベランダの窓ガラスをドンドンドンと激しく叩かれたことがあったが、カーテンを開けてベランダを見ても誰もいないという変な体験はした。

 

その後、とうとう妻が「もう昼間に一人で家にいれない」と実家に帰ってしまい、娘も同調した。

 

妻の実家の両親は、そういった話を笑って聞いてくれるタイプなので、色々と相談した結果、互いの家の距離が近いこと、娘も転校の必要がないこともあり、妻の実家に引っ越すことになってしまった。

 

ただ、「幽霊のせいで私はマスオさんだぞ!」的な冗談を言って笑えるくらい、引っ越した後は何も起きないので、やっぱり件の家は処分して賃貸でも借りようか、という流れに落ち着いた。

 

そんなある時、会社の同僚にその話をすると、興味津々で「壁の中を確かめたい」と言ってくれた。

 

正直色々あって私も一度確かめたかったので、同僚の勢いをもらって売却前に壁を割って確かめることにした。

 

あれだけ戻りたがらなかった妻と娘も、なぜか当日は「壁の中を確かめておきたい」と言い出し、同僚を含め4人で元我が家へ乗り込んだ。

 

実際は生活品を回収しに何度も戻っていたので、そこまで久しぶりでもなかったが。

 

同僚がどこからか大きなハンマーとバールを持って来ていたので、男2人で割れ目の辺りからバキバキと破壊した。

 

中は1畳分ほどの板張りの部屋になっていて、カビのせいか床は真っ黒なタールでも塗ったような色をしており、じめっとしてカビ臭を放っていた。

 

4人して「なんか部屋あるね」、「部屋?」という反応になり、娘が「監禁部屋?」みたいな謎推理をしていたが、結局は何かわかるわけでもなかったので、変な後味だけを残して後日に引き渡して終わった。

 

ただ、あの壁を壊してからしばらくは、また変なことが続いた。

 

特に同僚がその年の秋頃から、「虫がいる!虫が見える!」と手で払うような仕草を仕事中や会議中にも頻繁にするようになったり、今は治ってはいるが突然大声を出したり。

 

娘は心霊含めオカルト系にのめり込んだりして色々あった。

 

本当に色々あったが、全てを思い出して話すのは怖いのでここまでで。

 

(終)

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