百人で百物語のはずが
伊集院光の話。
伊集院は、TBSラジオで
深夜番組を長いことやっていた。
ある日、
その番組で「百物語」をやろう、
ってことになった。
恐い話を知っているスタッフ、
一般の人。
そして、
もちろん伊集院自身。
一人一話づつ話していって、
ロウソクの炎を消していく・・・
といった形だ。
当日になり、
きちんと百人集まった。
「じゃあ、始めようか」
伊集院が一話目を話し、
続いて二話目、三話目、
と続いていく・・・。
九十八話、
九十九話、
そして、百話目・・・。
だが、話し終えてしばらくしても、
特に何も異変はなかった。
「なんだぁ~、結局
何も起こらなかったな」
軽く落胆しながら、
百人は打ち上げをするために
居酒屋へ向かった。
酒のせいか、
百人とも馬鹿騒ぎをしている。
その中の一人が言った。
「ちくしょ~、俺も話したかったな~、
せっかくとっておきの話だったのに」
その一言を聞いて、
酒宴をしている空気が凍った。
「百人しかいないんだぞ?
どうして話してないんだよ!?」
百人は、放送されたラジオの
録音テープを聞いてみた。
五十六番目・・・
その話はこの一言から始まっていた。
「・・・三年前の事故で、
俺が死んだ時のことなんだけどさぁ」
(終)