ある村の祭りを写真に撮ったのだが
うちの嫁が昔に旅行代理店で
添乗員の仕事やってた時の話。
徳島県に木屋平村っていう
過疎の村があって、
どこかの会社の慰安旅行の付き添いで、
そこへ行ったんだって。
自然以外は、
ほとんど何もない村。
客のほとんどは若いOLで、
後は上司の中年男性が1人いただけ。
二泊三日、
川でバーベキューしたり
山道をただ歩いたり、
かなりのんびりした旅行だったらしい。
何かのお祭りでもあるらしくて、
山道を鎧兜を身に纏った村人たちが、
馬に乗ってたり歩いたりしてた。
かなり本格的な衣装だったので、
OL達は感心して写真を撮りまくった。
帰りのバスで、
OLの一人が急に体調を崩して、
泡まで吹いちゃって。
ちょっとヤバイ感じだったので、
救急車を呼んで近くの病院に
運ばれていった。
上司の男性が付き添いで
一緒に行った。
その後の車内は、
嫌な感じというか、
うまく説明出来ないけど、
嫌な気配が充満してたんだって。
特に、
運ばれたOLの座っていた座席に
気持ち悪い気配があって、
誰もその方向を見ようとしなかった。
隣や前後の席にいた客も、
座席を替えて座ったらしい。
嫁は、一生懸命に
場を盛り上げようと・・・。
色々話をしたんだけど、
車内は暗い雰囲気に包まれてしまって、
泣き出す人もいた。
嫁は車内全体を見回す場所に立って
話をしなくちゃいけないから、
例の座席の付近も、
必ず視界に入ってしまう。
気にしないように気にしないように
と思いつつも、
その座席の方に目が行ってしまう。
パーキングエリアに到着すると、
OL達はみんな我先にと
外の空気を吸いに車外へ出て、
運転手もトイレに行った。
嫁は一人車内に残されて、
嫌な気配のする座席へ行ってみた。
座席の下に、
ポラロイド写真が落ちていた。
運ばれていったOLが鎧兜の村人と
一緒に写ってる写真だった。
嫁は急いでその写真を、
パーキングエリアのゴミ箱に捨ててしまった。
その写真・・・
鎧兜の武士が
OLの方へ駆け寄って、
振り下ろされた刀が首に深々と
食い込んでる瞬間だったんだって。
その後、嫁は即仕事を辞めて、
写真のことは秘密にしたと。
俺に話すまでは、
誰にも言わなかったらしい。
後で木屋平村のことを
調べてみたんだけど、
鎧兜を着る祭りなんて無いし、
そんな風習も全く無いとのこと。
(終)