午前2時半にエレベーターが向かった先は
以前に私の住んでいた社員寮は、築30年以上のマンションを丸ごと借りた形だった。
エアコンは無かったが、自分で取り付けるのも面倒だし、お金も無い。
なので、夏は扇風機のみで過ごしていた。
しかし2年前の猛暑の夜、あまりの暑さに汗だくで起きた私は、どうしてもスポーツドリンクが飲みたくなって1階にある自動販売機に向かうことにした。
時間は午前2時半くらいだったと思う。
私がエレベーターの前に立った途端、階数表示のランプが光って、エレベーターが1階から上ってきた。
「こんな深夜に誰か帰って来たのか?パジャマだから鉢合わせしたら恥ずかしいなぁ」と、2・・・3・・・と光るランプを見ながら漠然と思っていた。
そのエレベーターは私のいる階を通り過ぎ、6・・・7・・・と止まる様子はない。
なんだかおかしいと思っていたら、遂に屋上を示すRのランプが光った。
その瞬間、暑さなんて吹き飛んでダッシュで部屋に戻り、布団を被って丸まっていた。
なぜなら、屋上は立ち入り禁止の場所。
そもそも扉には鍵が掛かっていて、入るのは不可能なはず。
あのタイミングでRが光ったということは、誰かが1階から屋上へ行こうとしたか、もしくは屋上にいる人がエレベーターを1階から呼んだか、それとも・・・。
夜風に当たっている人がいたのかも知れないと思ったが、先述の通り立ち入り禁止の屋上で丑三つ時、なかなか考えづらい。
あの有り得ないエレベーターの動きは誰の仕業だったんだろう・・・と今でもふと考える。
(終)
こういう見ちゃいけない物を見た感じ、ぞくぞくするよね。