車窓から見かけた奇妙な老婆
これは、出張で大阪から名古屋に向かう途中のこと。
特急電車に乗って車窓を眺めていたら『奇妙な人』を見かけた。
線路沿いに戸建て住宅がいくつか並ぶ中、一軒分だけ更地になっているところがあった。
単なる空いている宅地なのだろうが、そこに“線路に向かって呆然と立っている人”がいた。
たぶん老齢の女性。
白髪のロングヘアで、白いTシャツに柄物のズボン。
顔と表情はよくわからない。
とても不思議な感じがして、気になった。
何というか、そんな場所で線路に向かって立っている理由が見当たらないから。
それこそ電車に飛び込むつもりでもなければ、そこに人が立っている理由がない。
そして名古屋で一仕事終えて、その日のうちに帰ることになった。
名古屋から帰りの切符を買い、大阪行きの特急電車に乗る。
すると、行きの際に見たその老婆が、まだ同じ場所に立っていたのだ。
本当にびっくりした。
その時は夏で日も長く、すでに夕方だったがまだ外は明るかった。
行きの際に見た時からすでに6時間以上は経っていたが、同じ場所で同じ向きに立っている。
唯一違ったことは、行きの午前中は晴れていたが、帰りは夕立ちがあって雨が降っていたこと。
でもその老婆は同じ場所で、そして傘をさして線路の方をずっと見ている。
まさかこの人、午前中に見かけた時からずっとそこにいるのか?
そう思って、繰り返しになるが本当にびっくりした。
(終)