鑑識の記録係をしていた伯父の体験談
これは、伯父から聞いた話。
伯父は静岡県警の鑑識をする部署の記録係(主に写真)で働いていた。
昨年他界したが、生前こんな話を聞いた事がある。
場所柄、富士の青木ヶ原樹海へ現場検証に出向く事が月に一度はあったそう。
その日も樹海の自殺者の現場撮影のため、夕方くらいまで写真を42枚撮りのフィルム2本に現場の状態を色々な角度から撮影したという。
そして署に帰ると20時をまわっていた為、現像は翌日にすることにして帰宅した。
樹海じゃよくある事なんだ
家に帰り、お風呂にゆっくり体を沈める。
すると、しばらくして妙な事に気がついた。
洗い場の正面に掛けてある鏡に、浴槽から立ち上った湯気が人の顔の形のように浮かび上がっていたのだ。
伯父は妙に思い、手で鏡を拭き取った。
ところが、しばらくするとまた顔が浮き出てくる。
それは長い髪をした女性の顔に見えたという。
あまりに長湯の伯父を変に思った伯母が風呂場のドアを開けると、沸き立つ湯に全身を赤くした伯父が浴槽で震えていた。
それに、伯父は熱湯の中で「寒い寒い」と言っていた。
そのまま病院に入院した伯父のもとに、見舞いに来た同僚が樹海で写した写真を差し出した。(伯父は火傷で全治2週間と診察された)
見ると、現場を撮影したのは伯父だけだったが、なぜか伯父が写った写真があり、その写真には伯父の足元の地面に無数の髑髏(どくろ)が写っていた。
病院を退院してから御祓いしてもらった伯父に、署の先輩が「樹海じゃよくある事なんだ。あのての写真は全て廃棄されるんだがね」と教えてくれたらしい。
(終)