人が歩いた跡のような窪みと悪臭
これは、昔馴染みの話。
ある朝、里山を歩いていると、酷い“悪臭”に襲われた。
生臭い匂いが、眼下の川原から立ち上ってくる。
何か死んでいるのかと下りてみたところ、砂地の上に点々とした窪みが続いていた。
ぱっと見た感じでは、“人が歩いた跡”のように見える。
藍藻のような物が所々にこびり付いているようで、それがとてつもなく臭い。
窪みは川が淵になった場所で途切れていた。
散歩していた近所のおじさんが、彼と同じように川原へ下りてきた。
「おや、久しぶりにエンコウが出たのか」
おじさんによると、これは『エンコウ』と呼ばれる生き物の足跡だという。
いわゆる河童みたいなモノなのだと。
「あいつら日の高いうちは出てこないから。だからしばらくの間、暗くなってからはこの辺をうろつかない方がいいぞ」
それだけ言うと、おじさんは散歩に戻っていった。
(終)
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