夜の帰り道で遭遇した奇妙な一団
これは、夜の帰り道で奇妙なものを見てしまった話。
金曜日の飲み会の帰りだった。
家の最寄り駅で降りて歩いていたら、目の前に突然モヤがかかり、20メートルくらいしか先が見えなくなった。
「まぁ、家までは歩いて10分くらいだからいいか」
そう思いながら歩いていると、前から何かが近づいてきた。
何でこんな時間に?
人影のようだが、どうやら一人ではなさそう。
それどころか、何人もいる。
近くなって姿が見えると、それは『和装の花嫁』だった。
白無垢を着ていて、頭もきっちり結って角隠しを被っている。
その花嫁を中心に、黒い袴を着た男性が左右に2人おり、花嫁の後ろには巫女のような格好の女性2人が左右の裾を持って歩いていた。
そのさらに後ろから付いてくる形で、10人くらいの人が下を向きながら歩いていた。
その人達は服装も年齢もバラバラで、スーツ姿のおじさんから制服姿の女子高生、和服のおばさんと様々だった。
俺は「何でこんな時間に?」と思いつつも、とりあえず避けて一団が過ぎるのを見ていた。
一団は、皆一言も話さずに静かだった。
聞こえるのは布が擦れる「スッスッ」という音だけ。
一団は俺の前を通り過ぎて少し行った所で、ある家の前で止まり、門の方を皆が向いて深々と頭を下げた。
そして1人ずつ門から入り、玄関から家の中に皆が入って行った。
呆気に取られた俺は暫くぼーっとしていたが、気がつけばモヤも晴れていたのでさっさと家に帰り、風呂に入ってから就寝した。
そして次の日の夕方にそこを通りかかった時、あの花嫁一行が入って行った家でお通夜をやっていた。
(終)