もしあの扉を開けていたら
これは、俺が子供の頃の話。
実家は小さい丘の上に建てられている。
結構大きな屋敷で、2階建て。
4人家族だが、人が居ない時はかなり薄暗くて怖かった。
2階は物置扱いで人が行くことはなく、大掃除の時くらいしか上がったりしない。
・・・が、両親の帰りが遅くなったりした時に暇を持て余して、姉と一緒に探検隊を組んでちょこちょこ見て回っていた。
そんな扉はなかった?
2階には、親や親戚がお土産に持ってきたお面だとか、何に使うのか分からない箱、壊れた大小の時計、椅子などがあった。
ただ、裸電球だけの薄暗い照明が余計に不気味だった。
姉は怖かったらしいが、楽しんでいたのが分かった。
もちろん俺も楽しかった。
そんなある日、ちょうど影になっている場所で『小さな扉』を見つけた。
扉は俺の背丈ぐらいだったから、120センチくらいだろうか。
俺はその扉を開けようとしたが、姉が急に本気で嫌がり始め、仕方なく探検は終了した。
それから数日が経った頃、また両親が居なかったので2階へ行こうとしたが、姉は「もう行けなくなってるよ」と言った。
確かめると、2階へ行く扉に鍵がかかっていた。
俺はふてくされて寝てしまった。
大人になって姉に確認したところ、あの時は扉なんて無いのにガチャガチャする音を立てていたので怖くて止めた、だそうだ。
そして、親に相談して2階には上がれないようにしてもらったと。
2階の扉があった所を見てみたが、何もなかった。
・・・というより、あれだけあった沢山のガラクタ自体がキレイさっぱりになくなっていた。
ガラクタの行き先を聞いたところ、「そんな物は置いてなかった」と親は言う。
そもそも親や親戚は海外旅行なんて行かないし、お土産なんてお菓子ぐらいしか買ってこない、と姉から聞いた。
もしあの時、あの扉を開けいてたらどこに繋がっていたのだろうか。
今も気になっている。
(終)