廃校に泊まった夜に見えたもの
私の母はお寺の子供で、小さい頃から人魂なんかを普通に見てきたそうです。
私にも”そういう力”が宿っているのかどうかは分かりませんが・・・。
それは小学校5年生の頃、泊まりがけの臨海学校の時でした。
場所は、伊豆のとある所です。(場所名を言ってしまうと現地の観光業に差し障りがあるかもしれないのでご容赦ください)
私が見た彼らは一体・・・
私たちの宿は、なんと『廃校』でした。
元教室に畳を敷き、そこに40名くらいが一堂に寝るのです。
その校舎はもちろん木造で、2階建てでした。
私が泊まったのは1階の教室です。
その教室は廊下に面していて、廊下の外には3メートルほどの敷地があり、その後ろは急な山の斜面になっていました。
その廊下沿いに教室が並んでいるわけです。
私たち生徒は、1クラス1教室に布団を敷いて雑魚寝です。
昼間は海で水泳訓練などをやり、夕飯を食べ、布団を敷いて9時くらいには皆寝ました。
ところが、私は夜中にトイレへ行きたくなり、目が覚めました。
トイレは校舎の外です。
私が寝ていた場所は、廊下に一番近い教室の出口付近でした。
夏なので教室のドアは開け放しのままでしたので、廊下から山側の外が丸見えです。
そこで、何気なく外を見てみると・・・なんと廊下の外の庭に、トレパン姿で中腰のまま動かない20人ほどの小学生と思われる子供の姿があったのです。
そして不思議なことに、その真ん中に長い髪で白い着物を着た女の人が立っているのです。
心臓が凍りつきました。
彼らは静止画のように微動だにしません。
真ん中の女の人の顔はよく分かりません。
私は極度の近視なので、枕元に置いていたメガネをかけて、もう一度廊下の外を見ました。
でも、やっぱり居ます。
わざわざメガネをかけ直して見ても、居たのです。
これは・・・と思うと、怖くてトイレに行けません。
そこで、隣に寝ている親友を揺り動かし、起こそうとしました。
でも親友は起きません。
そこで、また廊下側の外を見ました。
やはり居ます。
彼らは皆、動かない中腰の姿勢で、真ん中には白い着物の女の人。
私は必死でトイレを我慢し、目を瞑っていました。
気が付くと外が明るくなっていたので、再度外を見ました。
もう居ません。
彼らの姿は煙のように消えていました。
そこで安心して、外のトイレに行きました。
一体、彼らは何だったのでしょう。
空襲でやられたのか?
山崩れでやられて埋まってしまったのか?
当時はそんなことを考えていました。
トイレから戻ると何人かの生徒が起きていて、布団の中でごそごそと話をしていました。
「なあ、お前、あれ見たか?」
そんな声に聞こえました。
それで、「ああ、私以外にも何かを見た人はいるんだなあ」と思いました。
きっと、その廃校では昔に何か不幸があったのでしょう。
それが何かは分かりません。
でも、メガネをかけ直しても見えるものは見えたのです。
私がはっきりくっきり見た、生涯で一番鮮明な体験です。
人に言っても仕方ないのですが・・・。
これとは関係ないのですが、霊的な体験はその後2回ありました。
ただ、大人になってからは全然そのような体験はありません。
やはり、子供のうちの穢(けが)れのない時の方がよく見るのではないでしょうか。
(終)