丑三つ時のFaxには御注意下さい

去年の夏休みの恐怖を

思い出しました。

 

毎年、家族で旅行を

していたのですが、

 

去年は大学受験を

控えていたので、

 

一人、家に残りました。

 

家族が帰ってくる前日、

黙々と勉強をこなす私。

 

部屋はデッキから流れる

音楽で満ちていました。

 

喉が渇いたし、

休憩もしたいと思い、

 

キリが良いところで

終えました。

 

壁のアナログ時計を見ると、

午前2時17分。

 

今でも克明に覚えています。

 

デッキのストップボタンを押すと、

 

午前2時ですから、

家の中は静まり返っていました。

 

部屋にある、小型の

アナログ時計の秒針が、

 

静まり返った部屋に、

不気味なほど響きます。

 

「当たり前だよな」

 

と、口に出して

不気味さを払い、

 

下の階にある台所に行こうとした、

その時です。

 

部屋にある子機が

 

『ピリリリリ・・・』

 

と、4回の呼び出し音を

出したのです。

 

夜中の2時ですから、

 

かけてくるのは家族、

あるいは業者かと思い、

 

電話に出ました。

 

「はい、○○ですけど」

 

「・・・」

 

「もしもし?」

 

「・・・」

 

無音だったので悪戯だと判断し、

子機を乱暴に戻しました。

 

そして部屋を出ようと

ドアノブに手をかけようとした瞬間、

 

また子機が鳴りました。

 

悪戯だと思ったので、

今度は放置しました。

 

4回のコールの後、

途切れる音。

 

すると下の階から、

 

「ガガー・・・ガガー」

 

という音がしたので、

即座にFaxだったのだと分かりました。

 

でも、

 

「家族ならFaxじゃなくて電話するし、

業者がFax送るか?」

 

と不審に、というか

嫌な予感がしたので、

 

立ち止まっていました。

 

10秒ほど経過したのでしょうか。

 

長い時間に感じましたが、

 

下から「ぎしっ、ぎしっ」という、

押し殺した足音と軋む床の音。

 

「びりっ」という、

紙が破れる音が聞こえました。

 

そして音が聞こえた後、

また聞こえる押し殺した足音。

 

頭の中は泥棒という2文字で

いっぱいになりました。

 

とにかく怖くなって

ドアの前にソファを移動して、

 

とにかく階段を上る音が

聞こえないことを祈っていました。

 

やがて朝がきて、

帰って来た家族。

 

恐る恐る、

 

「昨日の夜中にFax送った?」

 

と尋ねたら、

 

「送ってないよ」

 

と答えました。

 

それどころか、

 

数日前からFax用紙が切れていた

のを告げられた時は、

 

背筋が凍る思いでした。

 

丑三つ時のFaxには、

ご注意ください。

 

誰かが破きに来るかもしれません・・・。

 

(終)

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