緊急病棟に運ばれてきた自殺失敗者
医学生の友達が緊急病棟の研修をした時の話。
都会の緊急病棟には、交通事故の他によく運ばれてくるのが“自殺失敗者”だ。
その日も、3人目の飛び降り失敗者が運ばれてきた。
自殺志願者には珍しく、着飾った感じの若い女の子だった。
着飾ったというのか、ビジュアル系バンドの追っかけのような少し変な格好。
黒いレザーのジャケットに、赤いチェックのミニスカート、そして真っ白なブーツ。
髪は茶髪でツインテール。
顔は変な形になって運ばれてきた。
彼女の手荷物を検査すると
緊急病棟で研修の医学生がすることは二つあり、まずは医師の治療を見ること。
もう一つは看護士さんの雑用の手伝いだ。
そして、緊急病棟で大事な雑用といえば、身元確認の為の荷物検査だという。
もちろん、先ほど運ばれてきた着飾った女の子の手荷物も検査する。
治療をしている部屋とは別の部屋で、看護士さんと一緒にその女の子のバッグを開けた。
中には、ゴチャゴチャした肌色の部品のようなものが入っていた。
なんだろう?と、バッグをひっくり返して全部出す。
よく見ると、口紅やファンデーションに混ざって、バラバラにされた人形の足が入っていた。
それはリカちゃん人形のような人形で、腕、脚、胴体、頭、とバラバラにされている。
しかも、裸ではなく服を着たままだった。
そして、バラバラにされている人形の着ている服が、黒いレザーのジャケットに、赤いチェックのミニスカート、そして真っ白なブーツだった。
(終)