葬儀後の集金に伺った時、ご主人がこう言った
これは、葬儀屋で仕事をしている俺の心霊体験の話。
俺自身は『霊的なもの』に関しては懐疑派(完全に否定はしていない)だが、以前担当した喪家でこんな事があった。
その家はご主人(45才)、奥さん(40才)、娘さん(15才)の3人で3LDKのマンションに住んでいたのだが、ある日に奥さんが自宅のマンションで首を吊って自殺した。
もちろん葬儀を行ったわけだが、後日に葬儀の集金に伺った時、ご主人がこう言った。
「葬儀屋さん、変な事を聞くようだけど、お祓いをしてくれる人を紹介してもらえませんか?」
最初は何を言っているのか訳が分からなかった。
信じないわけにはいかなかった
話をよく聞いてみると、葬儀が終わった後も奥さんが家に居るらしく、部屋が片付けられていたり、散らかしたままにしていた台所の食器が綺麗に洗って並べてあるという。
非常に興味を持った俺はご主人に、「ちょっと表に出ませんか?」と持ちかけた。
そして台所が散らかっているのを確認した後に、奥さんが大切にしていたというタンスの上に並べられた大量のぬいぐるみの一つをこっそりと横倒しにして、ご主人と二人で部屋を出た。
1時間ほどファミレスで時間を潰した後、部屋に戻ってみると・・・。
確かに食器は洗ってある上に、流しの横にあるトレーの中に並べられていた。
ぬいぐるみもちゃんと元通りに立てられていた。
血が凍るとはこの事か・・・と、俺は全身の血の気が引くのを感じた。
すぐに俺の知っている寺の住職に連絡を取り、後日に祈祷をしてもうら事になった。
ただ、その家には怖くて連絡も出来ないし行きたくもないので、祈祷後にどうなったかまでは分からないが、その後ご主人から連絡がないところをみると大丈夫だったのだろう。
ご主人的には、奥さんを追っ払ってしまいたいわけではなくて、自殺した上にあの世にも行けないのではあまりにも不憫なので祈祷してもらいたい、との事だった。
最初に話を聞いた時は、このご主人、奥さんが亡くなったショックで頭がおかしくなってしまったか?と思った。
しかし、あんなおかしな現象を目の前で見せられたら信じないわけにはいかない。
この家は近所に世話を焼いてくれるような知り合いもなく、近くに親戚も居なかった。(通夜と葬儀で確認している)
集金に伺ったのは平日の午前10時頃だったので、娘さんが学校から帰ってきて片付けたとも思えない。
やっぱりあれは、亡くなった奥さんの仕業だったとしか考えられなかった・・・。
(終)