彼氏の妹と一緒に帰ってきた男性

団地

 

これは、幽霊かもしれない人を見た時の話です。

 

私は若い頃、付き合っていた彼氏の家に半同棲のような感じで居座っていた時期がありました。

 

彼氏の家は団地の5階にあり、また彼氏には中3と中2の妹がいました。

 

中3の妹とは仲良くしていましたが、中2の妹のユキちゃん(仮名)はよそよそしく、あまり口を利くこともありませんでした。

 

ただ、自分の家によくわからない女が転がり込んできて長居されると不快に感じるのは理解できるので、当たらず障らずな感じの距離を保っていました。

 

ある日、留守番中に台所で洗い物をしていると、ユキちゃんが中年男性と一緒に帰ってきました。

 

彼氏の家は母子家庭でしたが、近所に父親が住んでいると聞いていたし、妹たちは父親との仲も良好だと聞いていました。

 

なので、転がり込んできた女を追い出すために父親を連れてきたのか、それとも家庭訪問か何かで学校の先生と一緒に帰ってきたのか、と私は思いました。

 

帰ってきたユキちゃんに「おかえり」と言った後、一緒に帰宅した見知らぬ男性に目礼をしました。

 

ユキちゃんは恥ずかしそうに「ただいま」と言うと、そそくさと自室に向かっていきました。

 

男性はこちらには一瞥もくれず、黙ってユキちゃんの後に続きました。

 

男性が父親だったとしても先生だったとしても、反応が変だなぁと思いながら、お茶などを用意してユキちゃんの部屋に向かいました。

 

ノックをして戸を開けると、部屋にはユキちゃんしかいません。

 

「あれ?一緒に帰ってきた男性は?」

 

そう尋ねると、不思議そうな顔をして一人で帰ってきたと言います。

 

私はうまく言葉にできず「う~ん」と唸っていると、ユキちゃんはアルバムを引っ張り出してきて「この中にその人いる?」と聞いてきました。

 

その男性はすぐに見つかりました。

 

私が「ここにいるよ」と言って指差すと、ユキちゃんは自分を可愛がってくれた叔父さんだと教えてくれました。

 

過去形?と訝しく思っていると、「半年前に病気で亡くなった」とユキちゃんは言いました。

 

私は幽霊など全く信じていませんが、ここは5階建ての建物の5階にある部屋で、ドアは台所の横にしかなく、しかもベランダなどに面していない部屋から私に見られることなく脱出するのは不可能な間取りです。

 

なので、ひょっとしてあの男性は幽霊だったのかな?と思ったりしました。

 

(終)

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