旅館に来られた4人組のお客さんと遺影
これは、かなり昔に体験した話です。
当時、私はアルバイトとして旅館に住み込みで働いていました。
そして仕事が面白く感じる頃に、そのお客さんはやって来たのです。
お客さんの人数は4人。
皆さんの顔からは、悲しい感じが伝わってきました。
そのうちの一人が、『笑顔で撮られている女性の遺影』を持っていたのです。
正直、怖かったです。
私は遺影を見ないようにしながら、お客さんを部屋へ案内しました。
遺影の女性
その部屋からは、笑い声どころか会話も聞こえてきませんでした。
次の日、お客さんが帰った後、その部屋の布団を片付けに行きました。
そして部屋に入った瞬間、ゾッとしました。
遺影が置いてあったのです。
それも、遺影の女性がこちらを見ているのです。
私は触るのも怖くて、その場で固まってしまいました。
すると後ろから、誰かが歩いてきて部屋に入ってきました。
「取りに戻ってきたんだ。もぉ・・・忘れないでよ・・・」
私はそんなことを心の中で呟いていました。
しかし、本当の恐怖は目の前にありました。
部屋に入ってきたのは、その遺影に写っている女性だったのです。
私は一瞬でパニックになり、声も出ませんでした。
もちろん、すぐさまダッシュで部屋から逃げ出しました。
一階のロビーに戻ってこのことを伝えると、部屋がある二階には誰も上がっていないとのこと・・・。
その後、3人程で件の部屋に確認へ行くと、そこには遺影がありました。
私も含め、皆が無言になりました。
それに、笑っていたはずの女性の顔が、切なくても怒りに燃えているような顔になっていたのです。
結局、その遺影は誰も取りに来る者はいなく、神社に供養してもらうことになりました。
神主さんが言うには、遺影の女性は「笑っていた」そうです。
(終)