その点検口だけは絶対に詰まらないワケ
※名前は全て仮名
これは、職場で伝わっている心霊現象にまつわる話。
俺は、とある廃棄物処理場で働いている。
そこには細かい金属の屑が流れる配管がある。
その配管は4系統あり、またそれぞれに3箇所の点検口があり、定期的に点検をしている。
たまに詰まることがあり、詰まると復旧が非常にメンドクサイのだ。
だが、1箇所だけ誰も開けない点検口があり、先輩に聞いても「そこは見なくていいから」とだけ言われた上に、機嫌まで悪くなって教えてくれない。
そう言われると、やっぱり気になるのが常。
青白い手
後日、職場の飲み会の後で、酔っ払った別の先輩に聞いてみたところ、あっさりと教えてくれた。
「あそこは絶対に詰まらないから大丈夫。詳しいことは阿部さんに聞いてくれ」
阿部さんというのは古株のオッサンで、俺はあまり普段から接点がないので迷ったが、どうしても気になったので聞いてみた。
阿部さん曰く、「あそこの点検口は開けると青白い手が出てくんだよ」と。
なんだか安っぽい怪談だなぁと思いつつ、でもじゃぁなんで詰まらないのよ?なんて考えていたら、阿部さんの話に続きがあった。
「みんなが気味悪がって点検しないから、頻繁に詰まるようになって困っていたんだ。仕方なく、武藤さんに頼んで一緒に点検しに行ったんだよ」
武藤さんというのは阿部さんの元上司で、俺が入社した時にはもう定年で退職していた。
「開けたらやっぱり手が出てきて焦っていたら、武藤さんがいきなりプラスチックハンマーで手をブン殴って怒鳴ったんだよ。『くだらねえ事してねえで、詰まらねえように見張っておけ!』ってさ」
実際に、その辺りが詰まったのはその後1回だけだったそうだ。
その1回詰まった時も、武藤さんが配管をハンマーでぶっ叩いて、「てめぇサボってんじゃねえぞ!今度詰まったらぶっ飛ばすぞ!」と怒鳴ると、それ以降は詰まらなくなったという。
そういう事があり、武藤さんの指示で「あそこは見なくていい」となったようだ。
嘘くさい話だが、確かにその点検口の辺りだけは詰まった事はないし、作業員のみんながそこへ行くを嫌がっているのも分かるので、本当なのかなぁと思いつつある。
余談だが、配管の作りは4系統全て同じなので、そこだけ詰まらない理由が分からない。
(終)