廃墟ホテルの現地調査を終えてから
これは、心霊と思しきものに関わってしまった話。
日本海側の、あるリゾートホテルに出張で行った。
ただリゾートホテルと言っても、既に閉鎖してから随分と年月が経っている、いわゆる『廃墟』。
出張の目的は、そのホテルをうちの会社が買うかどうかの、現地調査と写真撮影のため。
田舎の海沿いのホテルなので、駅からはかなり遠い。
タクシーに乗って目的地を運転手に告げると、「あそこは出るらしいよ」と言われた。
現地に着いて、確かに薄気味悪かった。
当然だが、人っ子一人いないホテル。
中に入ると、かなり荒れていた。
ソファーやダンボール箱などがそのままロビーの隅に山積みにされており、落書きやゴミも酷かった。
広いホテルなので、写真を撮るのも大変な作業だった。
電気も通っていないため、窓からの明かりがない所は懐中電灯を照らした。
そこそこ度胸があった俺は、薄気味悪いが淡々とホテルの中や外の写真を撮っていった。
その夜、宿泊先のホテルのパソコンから、上司にその日に撮った写真をメールした。
間髪入れず、上司から電話がかかってきた。
「お前、なんか変な写真が混ざってるけど別のホテルも写してきたのか?」
そう言われ、写真を全て見直した。
すると、一枚だけ変な写真があった。
それは結婚式などをするホールの写真。
ひな壇なんてなかったはずだが、そのひな壇に男女が座ってこちらを見ていた。
二人とも凄く怖い顔をして、こちらを睨みつけていた。
翌日、出張から戻って改めて撮影したカメラと上司のパソコンを確認してみると、なぜか件の写真だけがなくなっていた。
結局、そのリゾートホテルをうちの会社は買わなかった。
あの写真が原因かどうかはわからない。
そして、上司はその後しばらくして会社を辞めた。
辞める直前まで、「夢の中にあの二人の写真ではなく動画が出てくる」と言い続けていた。
俺はといえば、金縛りによくあうようになった。
その度に、天井にあの二人の写真が浮かび上がってくる。
でも、それは気のせいだと思う。
そう思わないとやってられない。
(終)