そこに何かが居るかもしれない現象
これは、友人の体験話。
単独行で山を楽しんでいた時のこと。
二泊ほど山中で過ごした日の夜、寝る前に持参した酒を一杯ひっかけた。
「ゲッ!?」
思わず嘔吐(えず)いてしまい、口から吐き出す。
昨晩まで美味だった酒が、いつの間にか酸っぱくて不味く、とても飲めるような代物ではなくなっていた。
その時ふと、不動産業に勤めている知り合いの言葉を思い出したという。
「霊が出るって噂のある部屋が空くと、ちょっとした確認をするんだよ。と言っても、日本酒を部屋の真ん中に一晩か二晩、置いておくだけなんだけどね。で、もし味とか色が変になっていたら、そこには”何かが居る”んだってさ」
話を聞いた時には面白く思ったものだが、いざ思い出してしまうと、とても面白いという気分にはなれなかった。
周りの闇がどうにも気になってしまい、一晩中まんじりともせず、夜が明けるや否や、予定を切り上げて下山した。※まんじりともせず=ちょっとも眠らないで
理屈的には、お仏壇に供えた物の味が抜けたりするのと同じなのだろうか。
(終)
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