とある病院の壁から生える指と覗く目
これは、空調関係の仕事をしている友人の体験談。
とても興味深かったので、本人の許可を得たうえでお話しする。
先日、私宛にこんな内容のメールが送られてきた。
それは、目黒区にある『病院』で工事をしていた時のこと。
機械室の壁に配管を通す穴を開けるため、位置寸法を測っていた。
ちなみに、この作業をコア抜きという。
機械室内は防音上、壁に吸音材が貼ってある。
正確な位置を把握するため、友人は吸音材を少しだけ捲った。
「指?」
そう、捲った目の前にあったのは”指”だった。
たぶん人間の人差し指、だと。
それが第2関節まで出ている。
もちろん壁から。
慌てて吸音材を放すと、指は壁に引っ込む。
「ん?」
また捲ってみた。
すると、やはり指が生える。
もちろん壁から。
また放す。
また引っ込む。
「ふふん!」
捲る、生える、放す、引っ込む…。
何度か繰り返す。
「マジ?」
懲りずにまた捲る。
だが、今度は”目玉”が現れ、こちらを睨む。
やはり壁から。
しかも片目だけ。
たぶん人間の左目、だと。
その後、吸音材をゆっくり元に戻し、その日は作業を止めたそうだ。
この日に予定していた作業は墨出しだった。※墨出し(すみだし)=柱の中心線や壁の仕上げ面の位置など、水平位置や中心位置となる基準線を書き出す作業のこと
翌日、コア抜き作業の墨出しをするため、昨日と同じ箇所の吸音材を捲った。
今度は何も起こらなかった。
予定通りの墨出しを終え、コア抜き屋を待つ。
コア抜き作業の前には、その場所に障害物等がないか確認のため、レントゲン撮影をする。
すると、そんな場所に電気配管が埋設されていたのだ。
結局はコア抜きの位置を150ミリずらして配管することになった。
もしそのままコア抜き作業をしていたら、病院は一瞬にして大停電し、大騒ぎになっていたことだろう。
あの指と目が何者かはわからないが、本当に感謝したという。
(終)