転勤族の子供たちの秘密の探求

田舎の家

 

私の父は2年毎に転勤のある仕事。

 

なので、姉が高校受験を迎えるまで引越しは続いた。

 

両親と姉、弟と私の5人家族。

 

大抵は県庁所在地のマンション住まいだったが、一度だけ周辺が田んぼに囲まれて、柱が黒光りするような“古民家”に住んだことがある。

 

家の雰囲気は、映画『愛しの座敷わらし』に出てくるような感じの家。※参考(愛しの座敷わらし

 

当時、私は小学4年生だったが、初めて自分だけの部屋をもらってすごく嬉しかった。

 

でも、それも束の間で、その家に来てから夜中に両親がケンカをしていることが増えた。

 

うちの両親はわりと仲良し夫婦だと思っていたが、母は東京の生まれの人だったから、「ああ、こういう田舎には来たくなかったのかも」と思っていた。

 

時々夜中に目が覚めると、階下から怒鳴り合いが聞こえ、でも朝になると父も母も普段通りだから、子供の前ではケンカを見せないようにしているんだなと思っていた。

 

ある日、思い切って姉に聞いてみた。

 

「パパとママ、もしかして仲が悪いの?離婚とかしないよね?」

 

すると姉も夜中のケンカに気づいていたらしくて、同じように心を痛めていた。

 

私たちは覚悟を決め、2人で母に言った。

 

「どうしてケンカしているの?2階まで聞こえるようなケンカはやめてほしい。聞いているのがツラい」と。

 

しかし母はキョトンとしてから、「こっちに来てから夫婦ゲンカなんてしたことないよ?」と言った。

 

母は続けて、「こっちに来てから家庭菜園やっているし、スーパーまで遠いし、家が大きいから掃除も大変だしで、毎日クタクタだからそんな気力ないわよ」と。

 

その日から私と姉は、夜は一緒に寝ることにした。

 

そんな日々から何十年も経ち、私も転勤族の男性と結婚した。

 

ある街でアルバイトをした時に、同じように親が転勤族だった由美子さん(仮名)と仲良くなり色んな話をしていると、住んでいた都市が被っているのが何ヶ所かあった。

 

そして、同じ田舎に住んでいたことで話が盛り上がっていた時のことだった。

 

ふと古民家のことを思い出した私は、こんな不思議なことがあって…と話をしたところ、由美子さんがビックリしながら、「それって▲▲▲って村じゃない?」と言って、それが大当たり。

 

こんな偶然があるのかと驚いたが、まったく同じ家に由美子さんも住んでいた。

 

そして由美子さんも、あの夜中の夫婦ゲンカの声を聞いていた。

 

ただ、1人っ子だったから怖くて仕方なく、両親に頼んで引っ越したそうで。

 

お互いにもうすぐ40歳になろうかという歳で、今さら怖いというのはないが、好奇心に駆られて2人で調査の旅に出ることにした。

 

両親に覚えている限りの情報を聞いてから出掛け、現地では2人の記憶を頼りにその古民家はあっさり見つかったが、かなり廃屋っぽくなっていて、誰も住んでいなかった。

 

周辺の人に聞いて回ったりしたが、さすがに不審者扱いされたのか、口は堅く、これといった情報は得られなかった。

 

ただ、「1人だけ話し相手になってあげたら喜びそうなお爺さんがいるよ」と教えてくれて、そのお爺さんに聞きに行った。

 

そうしたところ、昔に“古民家の裏の竹林で遺体が見つかったことがあった”そうで。

 

借金の返済を巡って争った末に撲殺されたらしい。

 

確証はないが、もしかしたらその返済を巡る争いの声だったのかな?と、一応それなりに納得して帰ってきた。

 

子供の頃の不思議な体験が、思わぬことから同士が見つかり、探偵ごっこの末に一応は解決。

 

姉に電話をして一部始終を話したところ、「なぜ私も誘わないの!」と、しつこいくらいに怒られた…。

 

(終)

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