ぐしょ濡れになる病室の怪
これは、腰を痛め10日間入院していた時の話。
病棟は『H』という文字の縦棒を長くした形で、右棒には整形、左は内科のあまりよくない退院の見込みの薄い人たちが主。
それを繋ぐ横棒部分にはナースステーションがあり、その真向かいには『死に部屋』とされていた一部屋があった。
私が入院する前日にも、その部屋でおばあさんが亡くなっている。
ぐしょ濡れの病室
入院3日目、その部屋から看護師さんの凄い悲鳴が上がった。
洗面所が近かった為、廊下の曲がり角付近から遠巻きにする患者さんたち。
婦長らの制止で、横棒部分には誰も入れなかった。
結局、その日は横棒部分は通行禁止に。
散歩がてら行き来していたが、行けなくなった。
4日目の朝、顔を洗いに行くと、その部屋の前で10人ほどの看護師さんがいた。
号泣している人もいて、異様な雰囲気だった。
婦長は怖い顔。
またも通行禁止に。
固く口止めがあり、患者たちは何も聞けなかったのだが、看護師の親戚の人が入院していて事情を聞けた。
あの部屋でおばあさんが亡くなり、病院から運ばれた日の翌朝、なぜか病室のベッドが水に漬かったようにぐっしょり濡れていて、床には水溜りが出来ていたそう。
「おかしなこともあるな」と、看護師たちでマットを運んだり、ベッドや床を拭いたりしたそう。
次の日、備品の補充に一人の看護師が部屋に入ると、まるで消防車で水をまいた後のように、床から壁からマットからぐしょ濡れだったとのこと。(先述の看護師はここで悲鳴を上げた)
婦長に叱られ、後始末をまた皆で行い、これは天井などの水道管からの漏れだろうと業者を呼んだ。
ただ確認したところ、その部屋の周囲には水が流れるような配管はなく、天井裏にも、上の3階にも水が出た跡はなかったらしい。(部屋は3階建ての2階の一室)
イタズラの可能性も考え、病室には鍵をかけることに。
しかし次の日、今度は天井までぐしょ濡れで、洞窟のように水が滴り、床はプールのようになっていた。
看護師が鍵を開け、戸を開けた途端、廊下まで水が流れ出てきたそう。
駆け付けた看護師たちも、あまりの恐さに号泣していた模様。
その後、私が退院するまでその部屋は立ち入り禁止のままだった。
ちなみに、その部屋で亡くなったおばあさんは、お腹に水がたまる病気だったという。
(終)
病室に発生してた水がおばあさんの腰から出てきた水だと考えると