恐怖と不思議が交錯した文化祭
※名前は全て仮名
これは私の代の文化祭で起こった、とても不思議で恐ろしかった話です。
学校では、文化祭には各学年対抗で劇を披露することになっていました。
文化祭が近づくと、体育館や運動場では各クラスの練習などが目立ち、どのクラスがどういった出し物をするのかはある程度わかります。
しかし、三年三組はずっと練習をしているようでしたが、私たちにはわからない場所でしているようで、まったく検討がつきませんでした。
文化祭の前日にはリハーサルがあります。
ですが、その時も三年三組は舞台には出ず、別の場所で練習をしているようでした。
みんな、何をするんだろう、変だなあ、と不思議がっていました。
すると、私の友達が小さな声で「知ってるよ」と言うのです。
私は「え?」と聞き返しました。
「四谷怪談よ。それもほら、一年前にB校舎から飛び降り自殺したあの子の話を脚色して」
「えーっ!?そんなことしていいの?」
「なんか、自殺をしたあの子の生活を背景に、教育的なものも踏まえてやるそうよ」
聞くところによれば、クラスの担任までもが大反対しているのにやるそうです。
どうやら三組の緒方くんという、不良でわりと信頼のある男子が主催したとか。
そして文化祭の当日。
いよいよ劇の時間がやってきました。
第一幕は三年一組、二幕は二組、そして三組の『学校四谷怪談』が始まりました。
自殺した女の子を振って浮気をする役に緒方君。
女の子役は、これまた不良の田部さん。
劇も半ばになり、いよいよ女の子がカッターナイフで自殺を試みるシーンになりました。
女の子が「みんな、さようなら」と言って手首を切って倒れた後、突然観客のどよめきが起こりました。
田部さんが倒れたまま動かないからです。
緒方君も心配そうに様子を見に近づきます。
そして緒方君が田部さんを起こした後、みんなが田部さんの手首が実際に切られ、血しぶきを上げているのを見てしまいました。
「本当のナイフを使うなんてバカ野郎が!救急車だ!すぐ救急車を呼べ!」
三組の担任が怒鳴りました。
すると突然、体育館の照明がブツンと消えてしまったのです。
それからでした、私の身に不気味なことが起ったのは…。
真っ暗闇でみんなの悲鳴が響く中、私は異様な緊張感に襲われ、硬直しました。
しばらくすると、息が出来ないほどの状態に。
その時、誰かがドンと私を後ろから押しました。
おかげで私の硬直も解けたのですが、後ろを振り返ると、青白い顔をした女の子が私をじーっと見ていました。
2、3秒ぐらいして、明かりが点き始めます。
ただ体育館の水銀灯は、一度消えると元の明るさに戻るまで、しばらく時間がかかります。
まだ、どよめきは聞こえていました。
ふと薄明かりに照らし出された舞台を見ると、田部さんを抱きかかえる緒方君の後ろに、さっきのあの女の子がいました。
気づいた直後、ふっと消えてしまいましたが。
最初はこれも劇の一つかと思いましたが、どうやらそうではなさそうでした。
それに、田部さんの怪我は本当のようです。
すぐに救急車がきて、彼女は一命を取り留めました。
後から聞いた話になりますが、不思議な体験と不気味な女の子を見たのは私だけではなかったようです。
先生までもが誰かに後ろから押されたとか、人魂のようなものが舞っていたとか言う人も。
それに、田部さんは本物のナイフなんて持った覚えはないとのことでした。
(終)