人形に石を投げつけた日の夜の怪奇
これは、これまでの僕の人生で一度だけ体験した怪奇な話。
通っていた小学校の裏に、小さな山があった。
そこには地元では有名な神社があり、学校の帰りにいつも友達とかくれんぼなどをして遊んだ。
ある日のこと、日が暮れてかくれんぼも終わり友達と集まっていると、ふと神社のお賽銭箱の脇に『古い女の子の和人形』が置いてあることに気づいた。
今考えると供養か何か意味のある人形だったと思う。
友達と「怖え~なぁ~」とか言い合っていたのだが、僕は友達に勇気を見せてやろうと、その人形に石を投げつけた。
それがなんと1発目が見事に命中する。
こともあろうか、人形の顔面のド真ん中にヒットした。
すると、カパッと人形の顔面が外れ、人形の中に石がスポッと入ってしまった。
人形の顔面は穴が開いて真っ黒になり、尋常ではない雰囲気になってしまったので、みんなで「うわっ!」と叫びながら逃げ帰った。
子供だからということもあってか、家に帰るとすっかりあの人形のことは忘れてしまい、テレビを見て、晩ご飯を食べた。
そして夜も遅くなり、さて寝ようと布団に入る。
僕の家は母子家庭だったので、母と2人で隣同士で寝ていた。
どれくらい時間が過ぎたかわからないが、夜中に小さな声で目が覚めた。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ…」
隣にいる母の声がする。
母は向こうを向いて寝ていたのだが、僕に声をかけているのかと思い、「何?」と尋ねた。
でも母は変わらず、「ねぇ、ねぇ、ねぇ…」とこちらを向かずに言っている。
小さな声で囁くので、怖くなった僕は「何!お母さん!」と肩を叩いた。
すると、母は「ん、んん…」とうなされるように、くるっとこちらを向くように寝返りをうった。
(あれ?寝てたんだ。今の声は寝言なのかな?)
そう思った瞬間、ガンッ!と何かぶつかるような物凄い音が母の顔から聞こえた。
ガコッ!
母の顔が、髪の毛や輪郭はそのままで、まるで昼間のあの人形のように顔の部分だけ丸く凹み、奥に落ちた。
母の顔には穴が開き、その穴から「これ、どうするの?」という声がした。
その瞬間、僕は何も考えることなく気を失った。
朝になると普段通りの朝になっており、母は起きて朝ご飯を作っていた。
夢だったのか現実なのかわからないが、あの人形が怒って出てきたのかなと思っている。
(終)