居ないはずの隣の部屋から聞こえる声
未だに住んでいるのですが、
築5年のまだまだ新しい
アパートでの話。
その日もいつも通り、
ベッドで寝ようと思ったんです。
ベッドは壁際で、
部屋はアパートの一番上で
角部屋なんです。
ベッド側にしか、
他の部屋は無いわけですが、
隣の住人は早くに出てしまって、
その時は空き部屋。
まぁ眠るかと電気を消して、
布団に潜って数分経ったでしょうか。
何か聞こえてくるんです・・・
「・・イタ・・ア・・・」
最初は何だろうくらいにしか
思ってなかったのですが、
それが段々と
耳元で聞こえてくる。
段々ハッキリと、そして
凄い勢いになってきたんです。
「・・タイ・・アタ・・アタマ・・アタマイタイ・・・
アタマイタイアタマイタイアタマイタイ」
別に聞くつもりは無かったけど、
確かに聞こえる。
女の人だ・・・。
ヤバイヤバイヤバイ・・・。
凄い声で、俺の耳元で
聞こえるその声が、
全然止まらない。
「アタマイタイ、アタマイタイ、
頭痛い、頭痛い、頭痛い・・・」
俺もう何がなんだか分からなくて、
でも全然それが終わらない。
背筋はゾクゾクするし、
全身で凄いヤバイって感じが
ビリビリする。
本当に危険な気がした。
何より本当に恐かった。
俺もうビビりまくって、
何かしなきゃあって。
念仏なんて唱えられないし、
でも数十分はそれが続いていて、
どうしようもない。
布団被ったまま座禅組んで、
ひたすら、
「南無阿弥陀仏・・・南無阿弥陀仏・・・」
その間もその声は止まらない。
俺のベタな念仏と
その声だけ聞こえる状況が、
それから10分程。
「頼む、お願いします、帰ってください、
お願いします、お願いします・・・」
声を出して頼んでた。
アホだったかも知れないが、
とにかく必死だった。
その後、それが止むまで
どれくらい経ったのか、
全く覚えていません。
止んだ後、
すぐに飛び起きて、
電気を点け、
テレビを付け、
先輩に電話。
体がガクガク震えるし、
その日は結局、
朝まで起きっぱなしでした。
それから先輩に言われた通り、
塩を部屋の四隅に撒いた。
(食卓塩しかなかったけど・・・)
夜中、部屋に塩を撒いてる姿は
自分でもどうかと思ったが、
あの時はマジでした。
普段そんなの信じてなかっただけに、
自分にとっては一番恐かったんです。
(終)