呪う女 15/18

俺はドキッとし、

「あ、いや、帰ります!どーも・・・」

と言い、出入口に目をやると、 

 

『中年女』はこちらに気付き、

ジィーっとこちらを見ていた。

 

「まったくっ!」

看護婦はそう吐き捨て、

再び見回りに行った。

 

いや、それどころでは無い!

『中年女』に見つかってしまった!

 

どうすればいい?逃げるべきか?

先程の看護婦に助けを求めるべきか?

 

俺の頭はグルグル回転し始め、

心臓は勢いを増しながら鼓動した。

 

俺は『中年女』から目を離せずにいると、

『中年女』は俺から視線を外し、

 

何事も無かったように、再びゴミの分別作業を

し始めた。

 

「え!?」

 

俺は躊躇した。

その想定外の行動に。

 

俺の頭には、

『襲いかかってくる』

『俺を見続ける』

『俺を見てニヤける』

 

と、相手が俺に関わる動向を見せると

思っていたからである。

 

俺はしばらく突っ立ったまま、

『中年女』を見ていたが、

 

黙々とゴミの分別をしていて、俺のことなど

気にしていないようだった。

 

「何かの作戦か?」と疑ったが、

俺の脳裏にもう一つの思考が浮かんだ。

 

『中年女』≠『掃除オバさん』?

やはり、似ているだけで別人・・・?!

 

俺と淳が疑心暗鬼になりすぎていたのか?!

やはり『中年女』とは赤の他人の別人なのか?

 

そう一人で俺が考えている間も、

その女は黙々と仕事をしている。

 

俺は意を決して、出入口に歩き出した。

すなわち、『その女』の近くに・・・

 

少しずつ近づいてくるが、相手は一向に

こちらを見る気配が無い。

 

しかし、俺はその女から目を離さず歩いた。

 

あっという間に何事も無く、

俺はその女の背後まで到達した。

 

女は一生懸命ゴミの分別をしている。

 

手にはゴム手袋をはめて、大量のゴミを

『燃える』『燃えない』『ペットボトル』

に分けていた。

 

その姿を見て俺は、やはり別人か・・・

と思っていると、

 

その女はバッ!っとこちらを見て、

「大きくなったねぇ~」

と俺に話しかけてきた。

 

俺は頭が真っ白になった。

 

大きくなったねぇ?

オオキクナッタネェ?

この人は俺の過去を知っている?

この人、誰?

この人、『中年女』?

 

こいつ、やっぱり『中年女』!!

 

その女は作業を中断し、ゴム手袋を外しながら

俺に近寄ってくる。

 

その表情はニコニコしていた。

俺はどんな表情をすればいい?

 

きっと、とてつもなく恐怖に引きつった

顔をしていただろう。

 

女は俺の目前まで歩み寄って来て、

「立派になって・・・

もう幾つになった?高校生か?」

 

と尋ねてきた。

 

俺は、この女の発言の意味が

分からなかった。

 

何なんだ?

俺をコケにしているのか?

恐怖に引きつる俺を馬鹿にしているのか?

何なんだ?

俺の反応を楽しんでいるのか?

 

俺が黙っていると、

「お友達も大きくなったねぇ・・・淳くん。

可哀相に骨折してるけど。

お兄ちゃんも気付けなあかんよ!」

 

と言ってきた。

 

もう、意味が全く分からなかった。

 

数年前、俺達に何をしたのか

忘れているのか?

 

俺達に恐怖のトラウマを植え付けた

本人の言葉とは思えない。

 

女は尚もニヤニヤしながら、

「もう一人いた・・・あの子、元気か?

色黒の子いたやん?」

 

!!

 

慎の事だ!

 

何なんだコイツは!

まるで久しぶりに出会った旧友のように。

 

普通じゃない。

わざとなのか?

 

何か目的があって、

こんな態度を取っているのか?

 

俺は『中年女』から目を逸らさず、

その動向に注意を払った。

 

こいつ、何言ってるのか分かってるのか?

 

「あの時はごめんね・・・

許してくれる?」

 

と中年女は言いながら、

俺に近づいてくる。

 

俺は返す言葉が見つからず、

ただ無言で少し後退りした。

 

「ほんまやったら、もっと早く

謝らなあかんかってんけど・・・」

 

俺は耳を疑った。

 

こいつ、本気で謝罪しているのか?

それとも何か企んでいるのか?

 

ついに『中年女』は、手を伸ばせば

届く範囲にまで近づいてきた。

 

「三人にきちんと謝るつもりやったんやで・・・

ほんまやで・・・」

 

と言いながら、ますます近づいてくる!

もう、息がかかる程の距離にまで近づいた。

 

あの時とは違い、

俺の方が身長は20センチ程高く、

体格的にももちろん勝っている。

 

俺は『中年女』に指一本でも触れられたら、

ブッ飛ばしてやる!と考えていた。

 

『中年女』は俺を見上げるような形で、

俺の目を凝視してくる。

 

しかし、その目からは

『怨み』『憎しみ』『怒り』

など感じられない。

 

真っ直ぐに俺の目だけを見てくる。

 

「あの時はどうかしててねぇ、

酷い事したねぇー・・・」

 

と、『中年女』は謝罪の言葉を並べる。

 

俺はもう、 その場の緊張感に耐えれず、

ついに走り出し、その場を去った。

 

走ってる途中、もし追いかけられたら・・・と

後ろを振り向いたが、『中年女』の姿は無く、

ある意味拍子抜けた。

 

走るのを止め、立ち止まり考えた。

さっきのは、本当に本心から謝っていたのか?

 

俺は『中年女』を信じることが出来なかった。

疑う事しか出来なかった。

 

まぁ、あの事件の事があるから当たり前だが。

俺は小走りで、先程の場所近くに戻ってみた。

 

そこには再びゴム手袋をはめ、大量のゴミの

分別をする『中年女』の姿があった。

 

こいつ、本当に改心したのか?

 

必死に作業をする姿を見ると、

昔の『中年女』とは思えない。

 

とりあえず、その日はそのまま帰宅した。

 

(続く)呪う女 16/18へ

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