死体洗いのアルバイト

いつの頃からか、

日本では、

 

「死体洗いのアルバイトがある」

 

という都市伝説が

流行るようになった。

 

ある人が、

 

大学時代にアルバイトで行なっていた

死体洗いのバイトがあるらしい。

 

彼が大学生だったのは、

1993~1996年。

 

場所は東京都内。

 

概要は以下。

 

1、

病院からは、

 

バイトの内容について部外へ口外

しないように伝えられている。

 

2、

ホルマリンのプールで死体を

棒で突くことはしない。

 

3、

事故等で血まみれになったり、

泥が付着した死体を、

 

布とアルコールで洗い、

綺麗にする。

 

4、

これは葬式に向けた洗浄であり、

解剖用ではない。

 

5、

必ずしも、毎日死体が

出るわけではない。

 

むしろ、

出ないことの方が多い。

 

6、

死体が出なかった場合(自宅待機)

のバイト代は8千円。

 

死体を洗った場合は2万円。

 

検証

死体洗いのアルバイトとは、

 

ホルマリンのプールに沈められた遺体を

洗浄するアルバイトのことであり、

 

現実に存在するそれと、

 

都市伝説において語り継がれている

架空のものがある。

 

日本における都市伝説、

死体洗いのアルバイトは、

 

「大学の医学部では、

 

解剖実習用の遺体を

ホルマリンのプールに浸けていて、

 

その遺体を洗ったり、

 

浮いてくると棒で突いて

沈める」

 

というもの。

 

都市伝説の内容のようなことはない。

 

遺体の保存については、

 

専門の知識を有する者が

大腿動脈等から保存液を注入し、

 

一体一体、

別々に保存庫で保管する。

 

また、

 

ホルマリンに関しては

ホルマリン中毒の観点から、

 

使用量は厳しく制限されており、

 

プールのように浸すということは

出来ない。

 

ホルマリンは揮発性が極めて高く、

しかも有毒なため、

 

大量に吸い込むと死に至る。

 

故に、ホルマリンプールなどは

ありえない。

 

解剖実習中においては、

 

ホルマリンではなく、

 

フェノールなどを振りかけるのが

一般的である。

 

この話には出自と思われる

ものがあり、

 

大江健三郎の小説「死者の奢り」が

初出とする説がある。

 

しかし、

 

この話を大江自身が

創作したのか、

 

聞いた話を小説の素材に

活用したのか、

 

どちらなのかは判明していない。

 

大江自身もそのあたりは

言葉を濁している。

 

初出に関する真偽は不明だが、

 

大江のこの小説が都市伝説として、

広く流布する一因になったとされる。

 

しかし、

 

この起源説には

異論もある。

 

「死者の奢り」の中で書かれているのは

「死体洗い」ではなく「死体運び」であり、

 

また作品中で死体を沈めている

プールの中の液体も、

 

一般に流布しているホルマリンではなく、

アルコールである。

 

これとは別に、

 

葬儀の際に行われる

湯灌(ゆかん)において、

 

遺体を入浴(洗浄)させる

場合があるが、

 

これが変形し、

 

死体洗いのバイトの話になった

のではないかとする説もあるが、

 

この作業には特に厳しい制限は

課されておらず、

 

アルバイトの者も遺体に触れられる。

 

日給は1万円~2万円程度とされる。

 

ただし、

 

業者や地域による差はあり、

厳粛な行為なので、

 

アルバイトに遺体を触らせるような

ことはしない(させない)という、

 

業者や地域も存在する。

 

また、湯灌に先立ち、

 

死亡直後の清拭や死に化粧は

看護師が行うが、

 

これに対する手当ては出ない。

 

このことを見ても、

 

「遺体を扱う忌み事だから高給」

 

と考える都市伝説の文脈は

適当でない。

 

結局、死体洗いのバイトはない

というのが一般的な説であるが、

 

出自や詳細、

 

広がるに至った経緯は

不明である。

 

(終)

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