孤独だった学生時代の話 1/2

御守り

 

重い内容で長い話になりますが、孤独だった俺の話を暇潰しに聞いてください。

 

小学5年生の時、交通事故で両親を亡くして祖父に引き取られた。

 

その時から俺の時間は止まってしまったようになり、何も考えられなかった。

 

事故の前の出来事は何も思い出せなくなり、何もかも楽しくなくなった。

 

転校した先の小学校でも、何も喋れず全く友達も出来なかったし、友達を作りたいとも思わなかった。

 

朝になったら学校に行き、自分の席に座って授業にのみ集中し、学校が終わればすぐに家に帰った。

 

先生は気を遣っていたようだが、クラスのみんなは気味悪がっていたと思う。

 

いつもステテコと腹巻姿の祖父は優しく、慣れない手つきで家事をしつつ、俺の好物の鳥の唐揚げをよく作ってくれた。

 

今でも感謝しているが、その頃は会話もほとんどなく、自分の部屋でゲームを延々としていた。

 

クラスでの俺は、誰の眼中にも入らない透明人間のような存在になっていったと思う。

 

そんな生活を続けていて、いつの間にか6年生になった。

 

クラス替えもないので、ほとんど環境も変わらなかった。

 

6年生になってからしばらくして、休み時間にいつもいじめられている女の子がいることに気が付いた。

 

茶色くて長い髪の大人びた綺麗な女の子だった。

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幸せな今だから話せる事

近くにいる奴のヒソヒソ話を注意深く聞いていると、彼女は白人の祖母を持つクォーターで父親を早くに亡くしており、母親が1年程前から新興宗教に入信し、熱心な勧誘活動をしているようだった。

 

「おい!外人!」とか「祟りがあるから触るな!」とバカにされていて、いつも仲間はずれにされたり、物を隠されたりしてからかわれていた。

 

先生も気付いていたと思うが、黙認しているようだった。

 

ある日の昼休み、いつものようにクラスの代表格の体の大きないじめっ子が、彼女が大事にしていたお守りを取り上げた。

 

周りのみんなはそれを見て笑い、囃(はや)し立てた。

 

そんな場面を今まで何度も見たが、俺は何にも感じなかった。

 

普段どんなにいじめられても平気そうだった彼女が、この時だけは必死に取り返そうとしていた。

 

「それはだめ。お父さんの・・・」

 

小さくて泣きそうな彼女の声が聞こえた途端、俺の中の何かが切れた。

 

俺は腹の底から「やめろ!!」と怒鳴り、机を倒し、いじめっ子に殴りかかっていった。

 

ケンカが強いはずのいじめっ子は不意をつかれたようで、椅子に躓(つまづ)いて倒れた。

 

すかさず馬乗りになり、彼女のお守りを取り返した。

 

それでも俺の怒りの爆発は収まらなかった。

 

その後も俺は机を倒したり、椅子を投げたり、張り紙を破ったりして、教室の中を狂ったように暴れ回った。

 

何故かこの教室の全てが憎らしかった。

 

いつも全く喋らない俺が暴れたので、周りのみんなは呆然と見ているか悲鳴をあげて逃げているだけだった。

 

騒ぎを聞きつけた先生が止めに入り、その場は収まった。

 

すぐに学校に祖父が呼ばれ、祖父は一生懸命に謝っていた。

 

俺はただ黙ってそれを見ていた。

 

次の日から、彼女はいじめられなくなった。

 

俺はさらに孤立したが、何とも思わなかった。

 

ある日の帰り、校門に彼女が待っていた。

 

「○○君。あの時はありがとう・・・。一緒に帰ってもいい?」

 

彼女は少し恥ずかしそうに俺に聞いた。

 

俺は頷いて一緒に歩いた。

 

彼女は黙って少し後ろを歩いていた。

 

そして、彼女の家と俺の家との分かれ道に着くと、彼女は「じゃ、また明日」と笑って手を振って帰っていった。

 

次の日の朝、分かれ道に彼女は待っていて、一緒に学校へ行った。

 

こうして毎日、俺と彼女は一緒に登下校した。

 

休み時間も彼女がそばにいるようになった。

 

最初は何も話さなかった彼女だったが、次第に打ち解けてきて、家族の事などをぽつりぽつりと俺に話してくれた。

 

彼女が幼い頃、おばあさんに作ってもらったお菓子がとても美味しくて、いつか作れるようになって食べさせてみたいと言っていた。

 

たまに俺の家にも遊びに来るようになった。

 

俺は彼女専用のゲームのセーブデータを作り、夜の間に彼女の為にレベルを上げておいたりした。

 

俺も徐々に、一人でいるよりも彼女といる方が楽しく思えてきていた。

 

周りは色々と囃し立て、事あるごとにからかわれたが、俺は”危ない奴”と思われているようで誰も執拗には言ってこなかった。

 

俺も彼女も、周りに何を言われても全く気にならなかった。

 

彼女にだけは俺も話が出来るようになり、たまには笑うことも出来るようになった。

 

俺が笑うと彼女は、「○○君の笑ったところ大好き!」と照れながら言ってくれた。

 

彼女は幼い頃のおばあさんとの楽しい思い出をたまに聞かせてくれ、俺も何か思い出を話したかったが、どうしても事故の前の小さい頃の事が思い出せなかった。

 

それ以外は、彼女には何でも話せるようになった。

 

中学生になってからも、この関係は変わらなかった。

 

中学2年生の時、彼女が俺の家で遊んでいて、ふと俺に聞いた。

 

「どうしてあの時に助けてくれたの?」

 

俺は彼女が言った『それはだめ。お父さんの・・・』という言葉を思い出し、「俺のお父さんとお母さんも・・・」と口に出した途端、目から涙がぼろぼろ零(こぼ)れて止らなくなった。

 

俺の心の奥からは、後から後から事故の前の楽しかった思い出が涙と一緒に溢れ出し、泣きながら彼女にその思い出をひとつひとつ話した。

 

彼女も泣きながら辛抱強く聞いてくれ、俺を優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。

 

俺は彼女の優しさが嬉しくて、強く抱きしめて初めてのキスをした。

 

キスをやめると彼女は、「・・・○○君、大好き。ずっと一緒にいさせて・・・」と言った。

 

(続く)孤独だった学生時代の話 2/2

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