あいつからの最後のメッセージ
俺は、2011年に発生した東日本大震災で友達を亡くした。
震災の少し前にその友達と町で遊んでいた時、不意にソイツが携帯のカメラで俺を撮った。
「おもしれぇ~顔(笑)」とか言いながら。
そして、あの日。
お昼過ぎにソイツからメールの着信があった。
しかし俺は忙しかったので、中身を見るのは後でいいやと思っていたらデカイ揺れが来た。
その後の混乱はみんなも知っての通り。
俺の住んでいた町は壊滅的な被害を受け、ソイツは行方不明に。
たぶん、波に飲まれたんだと思う。
遺体は見つかっていない。
震災からしばらく経って、ようやく落ち着いた頃に、あのメールの事を思い出した。
震災後に家族や知人とやり取りした何十通ものメールの中に埋もれていた、アイツからの最後のメッセージ。
タイトルは『あんときの』。
本文は無くて、写真が1枚添付されていた。
ちょっと驚いた感じのマヌケな顔をした俺。
背後には、もう思い出の中にしかない生まれ育った町並み。
確かに、あんときに撮られたやつだ。
そして、俺の隣で楽しそうに笑っているアイツ。
なぜか2人で写っていた。
不思議と思うより先に、俺は泣いた。
(終)