物を隠す小さな白い手
俺は大雑把な性格で、子供の頃からよく無くし物をした。
消しゴムとか、ペンのキャップとか、そういった物だ。
どれも高価な物ではないし、さほど気にはしていなかった。
そんなある日、PCの前で爪を切っていると、視界の端に青い色がチラッと見えた。
その時に、フラッシュメモリのキャップを座卓の隅に置いていたことを思い出した。
このキャップ、今までに5個は紛失している。
「こういう関係のない所に無造作に置くから無くすんだよな。後で回収しないと」、なんて考えながら爪を切り続けていたら・・・・視界の端で『白い物』が動いた。
それが見えなくなった途端、座卓の上から青い色が消えた。
ハッとしたが、俺は気付かなかったように爪を切り続けた。
キャップのことなんか、すっかり忘れているように振る舞った。
俺と同じように、よく物を無くす人っていないかな?
それって本当に自分が無くしているのかな?
しょうもない物を盗んでいく、あの『白い小さな手』を見た人は、俺の他にもいるのだろうか。
(終)
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