はっきりとした夢を見ると
始めに、俺には霊感は無いし、もちろん霊体験の類も経験したことが無い。
それが初めて起こったのは高校生の時なんだけれど、その日は珍しくはっきりとした夢を見た。
朝礼は普通だった。
一限は数学だったけれど、前回の続きをやっていた。
普通に学校へ行って、普通に授業を受ける夢だったけれど、目が覚めたら授業開始の時間が過ぎていた。
つまり、実際は寝坊で遅刻だ。
とりあえず慌てて準備をし、学校には「今から行きます」と連絡を入れ、二限にはなんとか間に合った。
もし、『俺』に会っていたら・・・
学校に着いてからはまず職員室へ行き、担任に「すみません。寝坊で遅刻しました」と言った。
すると、担任は「はぁ?朝礼おったじゃろ?」と言う。
「いや、寝坊して今来たばかりです。一限も出てないです」と言って、とりあえずその場はそれで済んだ。
一限が終わってから教室に入り、友達に「俺、朝礼の時おった?」と訊くと、「はぁ?一限受けとったじゃん。その後なんか知らんけど、カバン持って出て行ったじゃん」と言われた。
そんな訳は無いので、「いやいや、俺寝坊して今来たばっかだし」と言って、その友達と一緒に何人かと話してみた。
すると、それは間違いなく『俺』だったし、確かに一限の授業には居たという事だった。
気味が悪いのでその話をやめて、一限の数学の授業内容を訊いてみた。
それが、一限の数学でやったところも、夢と全く同じだった。
もう考えたくなくて何も言わなかった。
俺が見た夢は一体?
この出来事が何なのか、まるで分からない。
夢で見たのは一限の授業を受けるまで。
でも、クラスメートが見た『俺』は、一限が終わって教室から出ていくところまで見ているらしい。
担任を始め、クラスの人間から遅刻した罰に担がれた、とその時は考えていた。
しかし、なぜかこのような現象が、それから一年に一度くらいある。
条件は、「はっきりとした夢を見る事」らしい。
一番最近では、今は一人暮らしをしているんだけれど、実家でテレビを見てる夢をみて、目が覚めたら妹から「今どこおるん?」と電話がかかってきた。
当然「こっちの家におるよ」と答えたら、「はぁ?ついさっきまでこっちにおったじゃん」と言われた瞬間、「あぁ、またか」と思った。
生霊なのか、ドッペルゲンガーなのか、未だにそれの正体は分からない。
ただ、一番最初にそれが起こった時、俺は一限終了少し前に学校に着いて、そのまま職員室へ行って、先生と話しをして、一限後の休憩に入ってから教室に向かった。
教室に居た『俺』が去ったのは、一限の終了後。
もしあの時、授業が終わる前に教室へ行ってたら、『俺』はまだ居たのだろうか。
もしも、その『俺』がまだ居て、会ってしまってたらどうなっていたのか。
そう思うと、心底ゾッとする。
(終)