人間の顔の付いた一反木綿
高校の時、変なものに付きまとわれた話。
そいつは下校時、特に部活やらで帰りが遅くなった時によく出てきた。
ふと振り返ると、曲がり角や死角になる所から”(´・ω|”こんな感じでこっちを見ている。
顔文字で書くと可愛らしいが、実際は肌色か白か灰色かわからない顔色で、目は見開き、髪は乱れてはいないがボサ気味だった。
性別は、男みたいな女とも、女みたいな男とも見える。
最初はストーカーみたいなのか知的障害者さんかと思ったが、ヤツが電柱から見ていた時に違和感が・・・。
影が無かった。
無性に気になり、「オイ、なんだよ!」くらい言ってやろうと近づくと、シュルシュルっと引っ込んで、目の前まで来た頃には消えた。
この日はこれ以降何もなかった。
ある日、また現れた。
今度は凝視しながら離れてみた。
すると、今度は逆に段々せり出てきた。
肩から胴、足・・・足が無い。
というか、裸なのか全身タイツなのか、体は顔と同じ色で下半身がヒョロヒョロしている。
ようは人間の顔の付いた一反木綿だ。
ヤツは、いきなり一直線に飛んできた。
体はなびいて顔だけがこっちに向かってくる様で、パニックになり猛ダッシュで逃げた。
が、目は離せなかった。
追いつかれると思った瞬間、横から衝撃が・・・。
どうやら気付かず道路まで出て、原付に撥ねられたらしい。
病院で気が付いた。
俺を撥ねた中年の男が、顔をクシャクシャにして何度も謝っていた。
その後、「友達も一緒に撥ねてしまった」と言われた。
しかし、いつのまにか現場から消えていたので、事後処理では被害者は俺一人ということで済ませたらしい。
もちろんその時は友達なんかいなかったから、「僕一人でしたよ。おじさんの見間違いでしょう」と完全に棒読みで言った。
(終)