他人の空似ならぬ犬の空似
私が小学生の時、我が家ではラブラドール・レトリバーを飼っていました。
その子はよく首輪から抜けて脱走し、ご近所の人が家まで連れて来てくれるということが度々ありました。
田舎の住宅地なので、大体は「あの家はあの犬を飼っている」と、ご近所なら把握しています。
当時、白のラブラドールを飼っていたのはこの辺では我が家だけだったので、脱走した時は親切に家まで連れて来てくれました。
うちのじゃないです
その日も夕方に家でテレビを見ていたら、またうちの犬が脱走していたようで、ご近所の人が玄関まで連れて来てくれました。
でも、うちの犬は脱走せずにちゃんと庭にいました。
うちの犬はラブラドールにしては小柄で結構太っており、なにより子犬の時の手術の跡が左前脚にくっきりと残っているので、まさか他の犬と間違えることはありません。
その時、うちの庭にはうちの犬がおり、近所の人が玄関に連れて来た犬も、うちのと全く同じ体型で手術跡もちゃんとありました。
結局、連れて来られたラブラドールは「うちのじゃないです」ということで、またご近所の人に連れ帰ってもらいましたが、何だったのか今も分からないままです。
他にも似たようなことがありました。
うちのお向かいの家では白いピレネー犬を飼っていて、当時その犬種を飼っていたのはその家だけでした。
ある日、うちの車庫にそのピレネー犬がいたので、お向かいの家の子が脱走して来たんだと思って連れて行きました。
でも、お向かいの家の庭には本物の犬がちゃんといました。
その時の私はまだ小学校低学年で、それに家に一人だったのでどうしていいか分からず、そのままお向かいの家のおばさんに犬を渡して来てしまいました。
この近辺は山を削って造った団地で、また他の集落とは結構離れているので、他所から犬が迷い込んで来ることはまず有り得ないと思います。
二度も犬の空似のようなことがあったので、どうしようもなく不思議でした。
(終)