その村で恐れられていたゴンボスジの家系
これは、知り合いの話。
彼女の田舎の山村には『ゴンボスジ』と呼ばれる家があったのだという。
その家系は呪詛をよくしていたと言われ、恐れられていた。
※呪詛(そじゅ)
呪うこと。特に人が人を呪い殺すために行うものは、古来日本では呪詛と言われる。
ゴンボスジは畑に呪いをかける。
呪われた畑の根菜類を引き抜くと、藪睨み(斜視)の目玉が幾つか付いていて、抜いた者を睨み付けてから消える。
睨まれた者は、程なくして死んでしまうのだそうだ。
とりわけゴンボ(牛蒡)がよく呪われたそうで、故にゴンボスジ(牛蒡筋)と呼ばれるようになった、そう伝えられている。
大層恐れられたが、何故か避けられてはいなかったようで、村はよくゴンボスジの娘を嫁に迎え入れていたと聞く。
そしていつの間にか村の中に溶け込んでしまい、ゴンボスジは途絶えたという。
しかし今でも村では、「嫁を取ったら絶対怒らせるな」と伝えられているそうだ。
嫁がゴンボスジの血を引いていれば、相手にその意志が無くとも呪われるから、だとか。
ゴンボスジというのは女系の家で、まず女しか産まれなかったとも伝わる。
「・・・という、まぁ言い伝えレベルの話だけどねぇ」
そう言って彼女はカラカラと笑った。
私は相槌を打ちながら、「この人は怒らせないようにしよう・・・」と思った。
(終)