魚のような生き物に憑かれていた看護師さん
これは、入院していた時に『変なモノ』を見てしまった話。
私は少し前まで、胃ガンで胃の切除手術のために入院していた。
手術の後、まだ意識が朦朧としている時に、看護師さんが声をかけてきた。
・・・が、その看護師さんの横には、看護師さんと同じくらいの背丈の大きな真っ黒い、人型だけど『顔が魚のような感じの生き物』が寄り添っていた。
そして、その生き物が何度も看護師さんの耳元に話しかけている幻覚のようなものを見た。
魚のような黒い生き物
「・・・れしゅか?」という感じの語尾の部分しか聞き取れなかったが、滑舌が悪くて「ですか?」が「れしゅか?」に聞こえた。
その時は恐怖を覚えながらも、今半分くらいまだ夢を見ている感じなんだろうなぁ、と冷静に思っていた。
意識が戻った後、その看護師さんがやって来た時はそんなものは見えなかったが、その看護師さんがやたらガリガリの体型で、申し訳ないが「あなたがガンじゃないのか?」と聞きたくなってしまうくらい顔色もよくなかった。
その夜、たまたまその看護師さんが夜勤だったようで、夜寝ている時に看護師さんが部屋に入って来た音と、懐中電灯の明かりで私は目を覚ました。
すると看護師さんの横に、またあの魚のような黒い生き物が見えた。
そして何度も看護師さんの耳元に、「・・・れしゅか?」、「・・・れしゅか?」と問いかけていた。
私は気持ち悪いなと思いながらも、どうせ夢だし、と思っていた。
翌日の朝、前日に入院していた同室の人が、「あの・・・、昨日の夜に見回りしていた看護師さん、なんか魚臭くなかったですか?」と聞いてきた。
続けて、「魚臭いっていうか・・・なんか、その隣に魚っぽいものが見えたり。手術前で不安だからかもしれないですけど・・・」と、本人も困惑しながら聞いてきた。
その人はその日に手術の予定で、前日の段階で末期ガンで全摘の可能性が高いが、お腹を開けてみて最悪の場合は何もせず閉じて緩和ケアにいくかもしれないという話をしていたので、これ以上の不安を煽れなかった。
なので、「ああ、なんかあの人臭いですよね。腋臭かな?その臭いで幻覚でも見たんじゃないですか?」と誤魔化した。
でも多分、あの看護師さんに何かが憑いているのだろう、と思う。
(終)