おっちょこちょいの私がある日に見た夢
これは、『夢と現実の狭間』のような体験をした時の話です。
私は、かなりのおっちょこちょいです。
例えば、玄関の鍵の閉め忘れをしょっちゅうしてしまったり、洗濯物を干した後に窓を閉め忘れた為に家族が「寒い寒い」と騒いでいたり、肝心な時に一番大事なモノを家に置き忘れたり・・・など、挙げればきりがありません。
そして何年か前、まだ子供達が小さかった頃のことです。
夫の出張が増えてしまい、ほとんど私一人で家事に育児、パートをこなす日々で疲れていました。
未だに忘れられない体験
夫は私を心配して、毎晩のように戸締りや火の元の確認を電話でしてくれました。
そんな夏のある日、私は真夜中にこんな夢をみました。
それは、私が夜中に起きてトイレへ行くと、玄関がそっとゆっくり開くのが見えたので、私は「ヤバい!」と驚いて走り寄りました。
すると、玄関には青白い顔をした男性が、ドアを半分開けて覗いています。
しかも、芥川龍之介のような恰好で。
何というのか、甚平のような服を着ていて、”昔の人”というのが分かりました。
彼は何をするでもなく、じっと青白い顔でドアから覗き込み、私を見ています。
今でも忘れられないのですが、どちらかというと怪訝な表情をしていました。
私は慌てて、「どうしよう・・・殺される・・・また鍵の閉め忘れやってしまった・・・取り返しがつかない・・・」と夢の中でパニックになり、そこで目がパチっと覚めました。
夢というのは何にしても大体現実とは違う様や設定が多いのですが、その日に見た夢は、自分の中で近年稀に見るリアルさでした。
目が覚めるまでは「現実なんだ」と思っていたし、夢の中で玄関から顔を出していた男性も、さっき本当に出会ったような不思議な感覚でした。
なんだか胸騒ぎがした私は、「まさか!?」と思って玄関を見に行きました。
すると、やっぱりその日、私は玄関の鍵をかけ忘れていました。
夕方に確かに確認したのですが、夜に宅急便が来たのでその後にかけ忘れたようで、そのままだったのです。
ちょうど夜中の2時くらいでした。
あの時の感覚は、とても言葉に表すことが出来ません。
ここは関東のとある場所なのですが、治安はあまり良くない方だと思います。
夜間の戸締りを怠れば、運が悪ければ空き巣や殺人犯に入られていてもおかしくありません。
偶然かもしれないし、戸締りを心配した心理がその夢を見させたといえばそれまでですが、あの時に心配そうに玄関前で私を見つめていた色白の男性の顔や表情が、夢と現実の狭間のようで未だに忘れられないのです。
ただ、あれからは夜の戸締りを忘れることがなくなりました。
(終)