死んでしまった父の不思議な訪れ

位牌

 

これは、父が亡くなった時に体験した不思議な話。

 

ちなみに私はこういう話は好きだけど、霊感はない。

 

父はあまりいい死に方をしなかった。

 

家族はショックで放心状態に。

 

なんとか力を合わせて乗り越えようと必死だった。

 

数日が経って少し落ち着いた頃、母は父を思い出して号泣した。

 

その時、テレビがついており、突然ザーザザーと画面が砂嵐のようになった。

 

とても大きな音だったので、みんなで顔を見合わせて固まった。

 

5分ほど続いたと思う。

 

その後は何事もなかったように番組は進行していたので、テレビ局側のトラブルではなさそうな感じで、我が家のテレビもそれ以降は何も起きなかった。

 

ただ、そんなことがあってから、嫁に出ていた私の元へ度々変な電話が入るようになった。

 

それはだいたい夜中だった。

 

その日も夜泣きした子供をやっと寝かしつけ、ソファーに座ったのが深夜2時。

 

なんとなく、電話が鳴る予感がした。

 

そしてやっぱり電話が鳴った。

 

ディスプレイを見ると通知不可。

 

非通知は見たことあったけれど、通知不可は初めてだった。

 

ドキドキしながら受話器を取った。

 

サーーーー。

 

何も喋らない時の機械音のようなノイズのような、そんな音がしばらく聞こえた。

 

「もしもし?もしもし?」

 

サーーーー。

 

何度かそれが続き、「お父さん?お父さんでしょ?お父さん!」と私が叫ぶと、とても苦しそうな吐息が聞こえた。

 

その呼吸音が、父のものに似ている気がした。

 

何かを必死に伝えようとしているようだったけれど、呻き声にしか聞こえなかった。

 

電話はそれっきりかかってきていない。

 

1年が過ぎ、1周忌の明け方に夢を見た。

 

リアルな夢だった。

 

見たことのない家で親族が集まっているのを私は見ていた。

 

母は父のことをみんなに話して泣きじゃくっていた。

 

親戚はみんな悲しそうに話を聞いていた。

 

しかし、母の隣には父が沈んだ顔で座っている。

 

うなだれるように、とても暗い顔で。

 

私は『みんなには見えないんだ。驚かせないようにそっとしておこう』と思い、別の部屋に一人で行った。

 

すると、そこには父が後ろ向きで立っていた。

 

私は前に回り込んで必死に喋った。

 

「どうして?どうして死んだの?なんで?なんでなの?酷いよ!」

 

どうしようもないくらい涙が出てきて、父の胸を叩きながら泣き叫んだ。

 

父はそんな私を表情ひとつ変えずじっと見つめ、手で私の涙を拭っていた。

 

ひとしきり泣いて落ち着くと、父は私を抱き上げて窓を開け、「○○、またな」と言うと手をパッと放した。

 

落ちる、と思うと同時に目が覚めた。

 

涙が止まらなかった。

 

たぶん挨拶に来たんだと思う。

 

今でも会話の内容も表情もはっきりと覚えている。

 

彷徨っていた父は、踏ん切りをつけてあちらの世界に旅立つ決心を伝えに来たのだと思う。

 

「またな」の言葉を信じて、再び頑張る決心をした。

 

(終)

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