山の中にある廃墟での肝試しにて
これは、もうだいぶ前のことになる。
悪友のマサオとタカシと3人で飲んでいた時に、酔っ払ったノリで近場の山の中にある『廃墟』へ肝試しに行くことになった。
ただ、廃墟と言ってもごく普通の民家で、こんな山の中に誰が住んでいたのか、そちらの方が気になるくらいの家だった。
ドアも窓も壊された廃墟に入り込むのは簡単で、懐中電灯を片手に建物の中を一通り見てまわり、外に出てタバコを一服する。
俺「なあ、そういえばここって女の子の幽霊が出るって話だよな?」
マサオ「ああ、昔この建物に連れ込まれて殺された女の子が出るっていう噂だ」
???「・・・・・・の」
俺「おい、今何か聞こえなかったか?」
マサオ「あ?何が?」
俺「何か聞こえたんだけど」
マサオ「気のせいだろ」
2人で顔を見合わせた。
俺「なあ、タカシは何か聞いたか?」
タカシ「違うって」
俺「え?」
タカシ「違うって言ってるんだよ」
俺「違うって何が?」
タカシ「だから違うんだよ」
俺「だから、何が違うんだよ?」
タカシ「その女の子はここで殺されたんじゃないって言ってるんだよ」
マサオ「おいおい、何言ってるんだよ、タカシ」
タカシ「だって、お前が『ここに連れ込まれて殺された』って言った時に、 『違うの違うの』って声がしただろ。ここで殺されたんじゃないんだよ」
次の瞬間、俺たちはもちろんすぐにその場を後にしたが、会話に割り込んできたあの声は、噂されている女の子の幽霊だったのだろうか・・・。
(終)