見張りを放棄した二人が見てしまったもの
これは、自衛隊所属の親戚から聞いた話。
三日間、山に篭って仮眠だけで交代する、戦争真っ只中を想定した演習があるそうで。
この時、山の一部に作戦やら指令を出す部屋を掘って、その穴の中で機材やらを設置し、出入り口も敵軍に見つかり難いようカムフラージュする。
何から何まで本当に本格的に、だと。
そしてある時の演習時のこと、外には二人の隊員を見張りで配備していたが、“その配備された隊員が真夜中に任務を放棄してすっ飛んできた”。
見張り二人「出たあー!!」
親戚(上官)「お前ら、見張りを放棄して何があった?」
その時、二人は顔面を真っ青にしてガクガクと震えていた。
見張り二人「見たんです!幽霊を!!」
話を詳しく聞いてみたところ、二人で見張りをしていると、前方からガサガサと物音がするので静かに注意した。
最初は動物かと思うも、明らかに人が歩く音が出ている。
数メートル先だったが、注視していると暗闇の中でも“人間のシルエット”が確認された。
そのため、二人で左右に分かれ、息を殺しながら対象人物に接近し、その者を捕まえる作戦に出た。
対象者との距離が三~四メートル付近になった時点で一旦止まり、静止を忠告するも、相手は全く聞く耳を持たない様子だった為、「これ以上は進んだら撃つぞ!」と言いながらジャキッ!と銃の装填音を出すも、微動だにしない。
この時はまだライトを点けていなかった為、隊員二人は同時に対象者を照らしたところ、そこには誰もいなかった。
二人の見張り隊員は震えながら、今しがたの出来事を上官でもある親戚にそのよう報告した。
親戚(上官)「夜明けももうすぐだし、恐怖を殺して持ち場に戻ってくれ」
見張り二人「すいません!無理です!こればかりは無理です!」
押し問答の末、隊員二人は怯えながらも持ち場に戻ることになったのだが、その演習場所を含め、隊員の寮でも自殺者は多い。
様々な理由で耐え切れず自ら命を絶つ。
ニュースなどで公表されず、奇怪なことを経験する人も多いそうで、親戚曰く「彼たちが見てしまったのは、自殺した隊員なのかもしれないな」と教えてくれた。
(終)