大勢の村人を見た場所
トラックの運転手で、
毎週、栃木まで運送やってる
南くんの話。
ノルマがきついので、
夜中に栃木の山中を、
猛烈なスピードで飛ばしてた。
街灯もない真っ暗な道を
ずーっと走って、
廃村を通り抜けたんだってさ。
廃村の中のゆるいカーブを
曲がりながら、
トラックのライトで突然、
何かが浮かび上がった。
着物のようなものを着た村人たちが
何十人と、こっちを向いて立ってた。
老若男女、みんな
こっち向いてたんだって。
夜中の二時に。
そんな居るわけない
と思いつつも、
焦ってたので飛ばし続けた。
翌日、無事に
荷物を搬送した帰り道、
日中に同じルートを
通りかかった。
あのカーブのところを
通りかかった。
「ここで大勢の村人を見たんだよな」
と思いつつ見ると、
そこは大きな荒れ果てた
墓場だったんだって。
(終)
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