廃村の小屋で雨宿りをしていると
これは私が体験した、少し不思議な話です。
学生時代、バイクで山を走っていた時のこと。
日本海を見に行こうと思い、山の中を気分よく走っていると雨が降ってきました。
最初はポツポツと降っているくらいでしたが、しばらくすると土砂降りになり、雨宿りができる場所を探しました。
すると、朽ちた家や小屋などがある『廃村』のような所に出ました。
ちょうどいい、ここで雨宿りするか。
そう思って小屋の前にバイクを停め、中に入りました。
上がり框(かまち)に腰掛け、ビスケットをかじっていると、雨音に混じって何か聞こえました。
ん?何だろう?と小屋から顔を出してみましたが、辺りを見渡しても誰もいません。
念のため小屋の中を探してみても、誰もいませんでした。
おかしいなあ?確かに人の声だったような・・・。
そう思っていたら、壁の向こうから何かが聞こえました。
「おなかすいたな~」
「おいしそうなのたべてたな~」
そんな感じのことを言っています。
そこに何かあるのか?と思い、外に出て壁の向こう側に行ってみると、草むらの中にお地蔵様がありました。
子供の頃、祖母から「お地蔵様は寂しがりやなんだよ」と聞いたことがあったので、周りの草を抜いてビスケットの残りをお供えしました。
そのお陰かどうかはわかりませんが、数分もすれば雨が止み、思っていたよりも早く出発することができました。
(終)