もっさんに魅入られた患者と死の関係
私が働いている病院のカテーテル室には、『もっさん』と呼ばれるモノが出る。
※カテーテル室
重症の心臓病患者の処置をする場所。
もっさんは、「青い水玉模様のパジャマを着ていたり」、「ぼさぼさ頭の中年だったり」、「若い好青年だったり」、「痩せた女だったり」、と様々。
そんなもっさんの共通点は、「部屋の隅で俯いて立っている」、「同じパジャマを着ている」、「何も喋らないし動かない」、「気が付くと現れ、気が付くと居なくなっている」、「その場にいる全員に見える」等。
もっさんが出た時、その処置中の患者は後日に必ず亡くなる。
亡くなった患者の処置の全てに現れているわけではなく、もっさんが現れた時の処置の患者は必ず亡くなるということ。
処置が成功しても、なぜか予後が悪い方へと向かってしまう。
もう随分も前から、もっさんは目撃されているらしい。
御祓いの類は何度か試みたらしいが、まるで効果が無いという。
年に3~4回しか現れないが、うちの科の先生やスタッフはみんな知っている。
処置中にもっさんが出ても、誰も反応せずに黙っている。
怯えるのは新人の看護師くらい。
若い先生なんかは、もっさんを見ると酷く落ち込んでしまうが、部長先生だけは、もっさんが出ても諦めない。
誰よりも、もっさんの姿を見ているはずなのに、このジンクスを信じていない。
「もっさんに魅入られた患者をなんとか救えないか・・・」と、部長先生は今も戦い続けている。
(終)