そこに近付くと死人が出る
実家に居た頃の話。
実家のある町内会では、毎月一回くらい集まって地区の道路を掃除したり、皆で酒を飲んだりする日がある。
その日は、遥か昔からある為に何を奉っているかも分からない神社だかお寺を掃除する日だった。
町内会の爺ちゃん婆ちゃん達は何故かそこには近づかないので、その息子たちの世代(俺の親父の世代)が半年に一回くらい掃除をする。
でも、そこの一ヶ所のU字溝の付近だけは、いわくつきと言うのか、「近づいたら死人が出る」と言われていた。
けれど、親父達の世代はそんなの年寄りの迷信だと思って、構わず掃除していた。
連鎖する死
すると、昼間は元気だった近所のおじさんが、その夜に突然亡くなった。
自宅の風呂場で亡くなっていたから警察も来たけれど、死因は脳梗塞かなんかだと言われていた。
ただ、昼間は凄く元気で健康そのものだった人が急に亡くなったし、“その人があのU字溝を掃除していた人だった”から、しばらくはその噂で持ちきりになった。
それからは色々とあって掃除はなかったが、数年後にまたそこを掃除する日が来た。
年寄り達は反対だったらしいけれど、神聖な場所ではあるだろうから、U字溝を避けてやることに決まった。
けれど、やっぱり迷信だと言って気にしない人もいるわけで、U字溝を掃除してしまった人がいた。
その時は、「ヤバイよ」と言う人もいたが、「笑い話になる」と言う人達が多くて、実際に気にする人はほとんどいなかった。
でも次の日の昼間、掃除した人が農機具に巻き込まれて亡くなった。
吸い込まれるように刃の中に潜っていったそうだ。
そんなこともあってさすがに何かあると思ったけれど、知っているかもしれない年寄り衆もほとんど亡くなっていたし、この科学の時代に怖いとは思っても本気で信じる人はいなかったらしい。
同世代が二人も亡くなって、「さすがにあそこは避けよう」ということになり、次の掃除の時は近付く人もいなかった。
掃除も順調に進み、伸びてきた木をうちの親父がチェーンソーで切っていたら、足場にしていた太い木が急に倒れ、木から落ち・・・・・・ていたら大惨事だったんだけれど、近くにいた親父の友人が下から支えてくれて事なきを得た。
しかし、親父の友人が親父を支えた場所が問題で、その場所は掃除しないようにと蓋をしたU字溝のちょうど蓋の上だった。
そこにいた皆が、「これはマズイぞ・・・」という空気になったけれど、蓋の上からだったし大丈夫だろうと思っていた。
でも次の瞬間、下から叩いてるような音と共に、U字溝の蓋が2~3回上下に動いた。
大人二人を乗せたままU字溝の蓋が上下に動いたもんだから、気味悪くなって「掃除はそこまでにしてもう解散」ということになった。
帰りは皆が無言だった。
親父の友人が亡くなったのは次の日の昼間だった。
釣りに行って海に落ちたそうだ。
一緒に行った人達は、「普通に会話してたのに、急にフラつきながら海に落ちたからビックリした」と言ったそうだ。
親父は一緒に行った人達に、「何ですぐに助けなかった!」と食ってかかったけれど、海に落ちた時にはすでに亡くなっていたそうで、助けようがなかったという。
親父いわく、「今年は震災で掃除はなかったけれど、今後掃除があってもあそこには行きたくない」とのこと。
以上が地元で実際にあった、心霊現象なんか信じない親父の体験した話。
(終)