呪う女 3/18

木には小さな子供(4~5歳ぐらいの女の子?)

の写真に、無数の釘が打ち付けられていた。

 

いや、驚いたのはそれでは無い。

 

その木の根元に、

ハッピーの変わり果てた姿が。

 

舌を垂らし、体中血まみれで、

眉間に一本釘が刺されていた。

 

俺達は絶句し、近づいて凝視することが

出来なかった。

 

蝿や見たことの無い虫がたかっており、

生物の死の意味を、俺達は初めて知った。

 

俺はハッピーの変わり果てた姿を見て、

今度、中年女に会えば、

次は俺がハッピーのように・・・と思い、

すぐにでも家に帰りたくなった。

 

その時、淳が

「タッチ・・・、タッチの死体が無い!

タッチは生きてるかも!」

と言い出した。

 

すると慎も、

「きっとタッチは逃げのびたんだ!

きっと基地にいるはず!」

と言い出した。

 

俺もタッチだけは生きていて欲しいと思い、

三人で秘密基地へと走り出した。

 

秘密基地が見える場所まで走って来たが、

慎が急に立ち止まった。

 

俺と淳は「!、中年女?!」と思い、

慌てて身を伏せた。

 

黙って慎の顔を見上げると、慎は

「・・・なんだあれ?」と基地を指差した。

 

俺と淳はゆっくり立ち上がり、

基地を眺めた。

 

何か基地に違和感があった。

 

何か・・・

基地の屋根に何か付いている・・・。

 

少しずつ近づいていくと、基地の中に

昨夜忘れていた淳の巾着袋が、

(淳は菓子をいつもこれに入れて持ち歩く)

基地の屋根に無数の釘で

打ち付けてあるではないか!

 

俺達は驚愕した。

 

この秘密基地、

あの中年女にバレたんだ!

 

慎が恐る恐る、バットを握り締めながら

基地に近づいた。

 

俺と淳は少し後方でエアーガンを構えた。

基地の中に中年女がいるかもしれない。

 

慎はゆっくりとドアに手を掛けると同時に、

すばやく扉を引き開けた。

 

「うわっ!」

 

慎は何かに驚き、その場に尻餅を付きながら、

ズルズルと俺達の元に後ずさりをしてきた。

 

俺と淳は何に慎が怯えているのか分からず、

とりあえず銃を構えながら基地の中を

ゆっくりと覗いた。

 

そこには、変わり果てたタッチの

死体があった。

 

「うわっ!」

 

俺も淳も、慎と同じような

反応をとった。

 

やはりタッチも、眉間に五寸釘が

打ち込まれていた。

 

俺はその時思った。

 

あの『中年女』は変態だ!

いや、キチ●イだ!

 

普通、こんなことしないだろう。

 

とてつもない人間に関わってしまったと、

昨夜この山に来た事を心から後悔した。

 

しばらく三人とも、タッチの死体を見て

呆然としていたが、慎が小屋の中を指差し、

 

「おい!!あれ・・・」

 

俺と淳は黙りながら、静かに慎が指差す

方向を覗き込んだ。

 

基地の中・・・

壁や床板に何か違和感が・・・ 

何か文字が彫ってある・・・

 

近づいてよーく見てみた。

 

『淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺

淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺・・・』

 

無数に釘で『淳・呪・殺』と、

壁や床に彫ってあった。

 

淳は「え??・・・」と目が点。

というか、固まっていた。

 

いや、俺達も驚いた。

なぜ名前がバレているのか!

 

その時、慎が、

「淳の巾着や。

巾着に名前書いてあるやん!」

 

「?!」

 

俺は目線を屋根に打ち付けられた

巾着にもっていった。

 

無数に釘で打ち付けられた巾着には、

確かに『五年三組○○淳』と書かれてある。

 

淳は泣き出した。

俺も慎も泣きそうだった。

 

学年と組、それに名前が

中年女にバレてしまったのだ。

 

もう逃げられない。

俺や慎の事もすぐにバレてしまう。

 

頭が真っ白になった。

 

俺達はみんなハッピーやタッチのように、

眉間に釘を打ち込まれ殺される・・・

 

慎が言った。

 

「警察に言おう!もうダメだよ。

逃げられないよ!」

 

俺はパニックになり、

「警察なんかに言ったら、

秘密基地の事とか、昨日の夜に

嘘ついてここに来た事バレて、

親に怒られるやろ!」

 

と冷静さを欠いた事を言った。

 

いや、当時は何よりも、親に怒られるのが

一番恐いと思っていたのもあるが・・・

 

ただ、淳はずっと泣いたまま、

「ッヒック、ヒック・・・」

何も、かける言葉が見つからなかった。

 

淳は無言で打ち付けられた巾着を

引きちぎり、ポケットにねじ込んだ。

 

俺達は会話が無くなり、

とりあえず山を降りた。

 

淳は泣いたままだった。

 

俺は今もどこからか

中年女に見られている気がして、

ビクビクしていた。

 

山を降りると慎が、

「もう、この山に来るのはやめよ。

しばらく近づかんといたら、あの中年女も

俺らの事を忘れよるやろ」

と言った。

 

俺は、

「そやな。んで、この事は

俺らだけの秘密にしよ!

誰かに言ってるのがアイツにバレたら、

俺ら殺されるかもしれん」

 

慎は頷いたが、淳は相変わらず

腕で涙を拭いながら泣いていた。

 

その日は各自家に帰り、この夏休みは

三人で会うことは無かった。

 

その二週間後の新学期、登校すると

淳の姿が無かった。

 

(続く)呪う女 4/18へ

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