リアル 3/11

ここでS先生なる人を紹介する。

 

母は長崎県出身で、

当然祖母も長崎にいる。 

 

祖母は、戦争経験からか

熱心な仏教徒だ。

 

S先生は、その祖母が週一度通っている、

自宅兼寺の住職さんだ。

 

俺も何度か会ったことがある。

 

俺は詳しくはないが、宗派の名前は

教科書に乗ってるくらいだから、

似非者の霊能者などとは比較にならないほど

しっかりと仏様に仕えてきた方なのだ。

 

人柄は温厚、

落ち着いた優しい話し方をする。

 

俺が中学に上がる頃、親父が土地を買い、

家を建てることになった。

 

地鎮祭とでも言うんだっけ?

兎に角その土地をお祓いした。

 

その一週間後に、長崎の祖母から

「土地が良くないからS先生がお祓いに行く」

という内容の電話があった。

 

当然、母親的にも「もう終わってるのに何で?」

ってことで、それを言ったらしい。

 

そしたら祖母から、「でもS先生が

まだ残ってるって言うたったい」って。

 

つまり、俺が知る限り、

唯一頼れる人物である可能性が高いのが

S先生だった。

 

日も暮れてきて、埼玉の実家がある

バス停に着いた頃には、夜9時を回る少し前だった。

 

都内と違い、工場ばかりの町なので、

夜9時でも人気は少ない。

 

バス停から実家までの約20分を足早に歩いた。

人気の無い暗い道に街灯が規則的に並んでいる。

 

内心、一昨日の事がフラッシュバックしてきて、

かなり怯えてたが、幸いにも奴は現れなかった。

 

が、夜になり涼しくなったからか、

俺は自分の身体の異変に気が付いた。

 

どうも、首の付け根辺りが熱い。

 

伝わりにくいかと思うが、例えるなら、

首に紐を巻き付けられて、

左右にずらされているような感じだ。

 

首に手をやって寒気がした。熱い。

首だけ熱い。しかもヒリヒリし始めた。

 

どうも、発疹のようなモノがあるようだった。

歩いてられなくなり、実家まで全力で走った。

 

息を切らせながら実家の玄関を開けると、

母が電話を切るところだった。

 

そして俺の顔を見るなり、こう言ったんだ。

 

「あぁ、あんた。長崎のお婆ちゃんから

電話きて、心配だって。

S先生が、あんたが良くない事になってるから

こっちおいでって言われたって。

あんたなんかしたの?あらやだ、

あんた、首の回りどうしたの!!?」

 

答える前に、玄関の鏡を見た。

奴が来るかもとか考えなかったな・・・、なぜか。

 

首の回りの付け根の部分は、

縄でも巻かれているかのように、

見事に赤い線が出来ていた。

 

近づいてみると、細かな発疹が

びっしり浮き上がっていた。

 

さすがに、小刻みに身体が震えてきた。

 

何も考えずに、

母にも一言も返事をせずに

階段を駈け上がり、

母の部屋の小さな仏像の前で、

南無阿弥陀仏を繰り返した。

 

そうする他、何も出来なかった。

 

心配して親父が「どうした!!」と、

怒鳴りながら走って来た。

 

母は異常を察知して、

祖母に電話している。

 

母の声が聞こえた。

泣き声だ。

 

逃げ場はないと、

恐ろしい事になってしまっていると、

この時やっと理解した・・・。

 

実家に帰り、自分が置かれている状況を

理解して、3日が過ぎた。

 

精神的に参ったからか、

それが何かしらアイツが起こしたものなのかは

わからなかったが、

2日間、高熱に悩まされた。

 

首から異常なほど汗をかき、

2日目の昼には血が滲み始めた。

 

3日目の朝には首からの血は止まっていた。

元々滲む程度だったしね。

 

熱も微熱くらいまで下がり、

少しは落ち着いた。

 

ただ、首の回りに異常な痒さが感じられた。

チクチクと痛くて痒い。

 

枕や布団、タオルなどが触れると、

鋭い小さな痛みが走る。

 

血が出ていたから、瘡蓋が出来て痒いのかと思い、

意識して触らないようにした。

 

布団に潜り、

夕方まで気にしないように心掛けたが、

便所に行った時に

どうしても気になって鏡を見た。

 

鏡なんて見たくもないのに、

どうしても自分に起きてる事を、

この目で確認しないと気が済まなかった。

 

鏡は、見たこともない状況を映していた。 

 

首の赤みは完全に引いていた。

その代わり、発疹が大きくなっていた。

 

今でも、思い出す度に

鳥肌が立つほど気持ち悪いが、

敢えて細かな描写をさせて欲しい。

気を悪くしないでくれ。

 

元々首の回りの線は、

太さが1センチくらいだった。

 

そこが真っ赤になり、

元々かなり色白な俺の肌との対比で、

正しく赤い紐が巻かれているように

見えていた。

 

これが、3日前の事。

 

目の前の鏡に映るその部分には、

膿が溜まっていた。

 

・・・いや、正確じゃないな。

 

正確には、赤い線を作っていた発疹には、

膿が溜まっていて、まるで特大のニキビが

ひしめき合っているようだった。

 

そのほとんどが膿を滲ませていて、

あまりにおぞましくて気持ちが悪くなり、

その場で吐いた。

 

真水で首を洗い、軟膏を母から借りて塗り、

泣きながら布団に戻った。

 

何も考えられなかった。

唯一、『何で俺なんだ』って憤りだけだった。

 

泣き疲れた頃、携帯が鳴った。

○○からだった。

 

(続く)リアル 4/11へ

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