幽霊になると行ったことがない所にも行ける
その上司は飲みに行くのが好きで、仕事の仲間同士(社外の出入り業者さんも含む)でよく集まっているそうな。
その日も飲んでから家に帰り、そのままトイレに行くと、自分より年上の男が座っていた。
一人暮らしの家だから、自分以外の者がいるはずがない。
しかしよく見ると、亡くなった飲み仲間の阿部さんだった。
家に来たことないのに
上司は「わー、幽霊だー」となるも、酒の入った頭で「とりあえずトイレに入りたいなあ、困ったなあ、退いてくれないかなあ」と思う。
そして何を思ったのか上司は、「阿部さん、悪いけどうちに来られても困るから。トイレに入りたいし。吉野の所に行ってくれない?」と移動をお願いしたんだそうな。(吉野さんは阿部さんと仲の良かった飲み仲間)
それを聞き入れたのか、阿部さんはスッと消え、上司は念願のトイレに入ってから、「消えたということはどこか行ったのかなあ」と思いながら就寝する。
その後、忙しさでしばらく飲みに行けず、久しぶりに飲み仲間の吉野さんに会った時、いつも明るい彼が青い顔をしていて、上司に「幽霊を見たんだ・・・」と詰め寄ってきた。
上司「もしかして阿部さん?」
吉野「そうそう、家に出てさ。来たことないのに」
上司「□月××日?」
吉野「そうだよ!あれ?誰か俺が話した奴に聞いた?俺、直接話してないよね?」
上司「あー、ごめん。××日に多分俺の所に先に来てるわ」
吉野「え、先に?なんで分かるの?」
上司「俺の所に来られても困るから吉野の所に行ってくれない?って言ったからごめんな。ホントに吉野の所に行ったのか。家に行ったことないから行かないかと思ったわ」
その後、上司は吉野さんにブン殴られたそうな。
そんな上司は僕に、「幽霊になると行ったことがない所にも行けるんだなあ」と、しきりに関心していた。
※名前は全て仮名
(終)