綺麗なわりに家賃が安い部屋にて
友人のトモヤは一人暮らしで、わりと綺麗なアパートの3階に住んでいる。(名前は仮名)
トモヤは「綺麗なわりに安いんだ~」と嬉しげに話していたが、引っ越しを手伝った俺や他の友人らはその安さの理由に気づいていた。
なぜなら、その部屋ではこんな事が起きていたからだ。
トイレに入ると、鍵を閉めても勝手に扉が開く。
窓際に女が座っている気がする。(灰色のスーツを着ている。女の姿は見えないが、皆がその存在を感じていた)
うめく声が聞こえる。
冷たい何かが首に触れた、等々。
どう考えても、この部屋は『訳あり物件』だ。
霊感のある友人は居なかったが、皆が「ここはヤバい」と言って、ほとんど遊びに行かない部屋だった。
部屋の主のトモヤは、その奇怪な状況に気づいていない様子だったが。
毎日窓際に立つ寂しげな姿
ある日、そんな部屋に住んでいるトモヤが仕事に来なかった。
その日の夕方、「泊めてくれ」とトモヤから連絡が来たので事情を聞くと、なにやら警察沙汰になっていた。
騒動の内容はこうだ。
前日の真夜中の事、3階にあるトモヤの部屋に乱暴目的の男が窓から侵入した。
そして部屋の中にいた女を押し倒した・・・らしいが、どうやら押し倒したのは『あの女の霊』のようだった。
トモヤは窓を破られた音を聞いて、すぐさまトイレから警察に通報した。
トモヤ以外に誰もいるはずのない部屋にいた人物を、犯人の男は押し倒したそうな。
しかしその女の姿を見た犯人の男は、慌てて3階のベランダから飛び降りた。
結果、体のあちこちを骨折し、入院から逮捕の流れに。
聞いた話だと、押し倒した女の霊の顔は血まみれで、服はズブ濡れだったそう。
でも美人だったという。
不法侵入と窃盗容疑で男は捕まったが、窓を破られて寒いのでうちに泊めてくれと言われた。
犯人の男は警察署で、「毎日窓際に立つ寂しげな彼女の姿が気になって侵入した」と言っていたそうだ。
しかし部屋の主のトモヤは、髪は長いが男だ。
それも熊みたいな奴だ。
どう見ても、美女と間違えるわけがない。
そんな事があったにもかかわらず、トモヤはその後も引っ越す事なく今もそこに住み続けているが、未だにあの女の霊はいる模様。
今回の騒動は、犯人の男が霊感があったが為に起こった事件かも知れないが、色んな意味で嫌な部屋だと俺は思っている。
(終)