異次元に行く方法
私と友人はオカルトにのめり込んでいた、
小学3年生の時の不思議な話。
ある日、友人が、どこからか仕入れたネタなのか、
「異次元に行く方法があるの」
と言い出した。
私:「それって大丈夫なの?ちゃんと戻って来れるの?」
友人:「うん。やり方も簡単だけど、2人じゃ出来ないの」
と言うので、数人を誘ってやってみることに。
友人:「私がこの石に祈って呪文を唱えるから、
いいって言うまで、みんな目を開けないでね」
私と友人、他3人の計5人で手を繋いで輪になる。
友人:「じゃあ、目を閉じてね」
友人が、ごにょごにょと、とても小さな声で何かをつぶやいて、
「いいよ」と言った。
目を開ける。
友人の家は公園に面していて、その儀式を行ったのも
公園に小学生が集まる放課後。
広がっていたのは、普通に変わらない公園の姿。
私:「何か変わった?」
友人:「うん。ここがそう。異次元なの」
そして、すたすたと公園に入っていく友人と、その他の友人たち。
私も、あちこち見渡す。
滑り台、ブランコ、タイヤ、グラウンド、遊ぶ子供たち。
何の変哲もない。
これは嘘だったのかなぁ。乗せられたのかなぁと、
子供ながら半信半疑。
グラウンドを周って見ると、
小さな山の片隅に、一輪のたんぽぽが咲いていた。
当時は真夏が少し過ぎたくらいで、
たんぽぽの咲く季節じゃなかった。
何か、それだけが、
とても綺麗に見えていた。
友人:「そろそろ帰ろう。長く居ちゃいけないの」
と言ったので、儀式を始めた所に戻り、
輪になって手を繋いだ。
友人:「みんなで、いっせーので帰りたいって言うの。目を閉じて。
いっせーの!・・・はい。目を開けていいよ」
目を開けても、やっぱり変わらない公園。
私:「ねぇ、ちゃんと帰って来れたの?」
友人:「うん。ほら見て。あの子もあの子も知ってる子でしょ?」
公園で遊んでいる子供を指さして友人は言う。
そこで気がつく!
さっきの公園では、誰も見知った顔が居なかった事。
子供ながら嘘でしょ?!と思って違うところを探す。
見当たらない。
最後に山を登る。
たんぽぽなんて咲いてなかった。
ぞっとした。という感覚を、
初めて覚えたのがこの瞬間だった。
友人にも、たんぽぽの話はしていなかったので、
私が気づかないうちに引っこ抜いたりとかは出来なかった。
未だに、たんぽぽの謎は解けない。
(終)