消えてしまった彼女の存在
2年ほど付き合っていた彼女がいた。
ある日の夜遅くのこと。
寝ようと暗い部屋で横になっていたら、
急に空気が張り詰めた感覚になり、
息が出来ない状態に陥って、
そのまま気を失った。
死ぬんだ、と思った。
翌朝、
普通に目が覚めた。
昨日の死にかけた思いは
何だったんだよー!
と思って、
とりあえずスマホを見た。
普段ならモーニングメール的なものが
彼女から来ているんだけど、
その日はメールが無かった。
忙しいのか寝坊したのかな?と思って、
特に気にせず出社した。
昼休みに確認してもメールが無くて、
おかしいなあ?と思って、
こっちからメールをしてみた。
また仕事に戻り、
中休みにスマホを確認したら、
メールが来ていた。
彼女からではなく、
送信エラーのメールだった。
あれ?
何かミスって送ったか?と思い、
何処に送ってエラーで返って
来ちゃったのかをチェックする。
彼女宛に送ったメールが、
エラーで返って来ている。
これまでそんなの一度もなかったので、
おかしいなあとは思ったんだけど、
とりあえずもう一回送ってみた。
今度はすぐに、
エラーでメールが返って来た。
アドレス変えたのか?
そう思って、
仕事が終わってから電話してみた。
俺「もしもし~?」
女「はい?」
俺「俺だけど、
メールのアドレス変えた?」
女「え?」
俺「今日送ったんだけど、
エラーでメール返って来てさぁ」
5秒くらいして、
ブツッっと電話が切れた。
切れたっていうか、
切られた?
電波の調子が悪くて
電話が切れたんだろうと、
リダイヤル。
俺「もしもし~?」
女「・・・はい?」
俺「いや今日ね、
メール送ったんだけど・・・」
女「え、ちょっとまって」
俺「ん?何?」
ん?何?と自分で言いながら、
何か変だという事にここで気がついた。
女「知ってる人・・・?誰?」
俺「え?誰って、○○○だけど。
え?●●(彼女の名前)だよね?」
女「違うよ・・・(笑)」
違う人と喋っていた。
途中で声が違うような気がしていたけど、
そこから改めて確認してみると、
全然声も喋り方も違っていた。
住んでいる所も遠い人だった。
電話を切り、
リダイヤル履歴を確認した。
・・・合っている。
間違いなく今かけた電話番号は、
彼女のものだ。
すぐにまた電話。
でもやっぱり、
さっきの人がまた電話に出た。
いつからその番号ですか?
とか色々聞いてみたんだけど、
2年近くこの番号だと言われた。
俺は混乱しちゃって、
とりあえず家に帰宅した。
そして、
落ち着いて考えてみた。
彼女がいなかった?
いなくなったというか、
最初からいなかった?
メールの履歴を確認したけれど、
前の日までは確かにメールしていた
記憶があったのに、
彼女からのメールも無ければ、
彼女宛の送信メールも無かった。
彼女の家の場所は知ってたから
行ってみたんだけど、
どうしてもたどり着けなかった。
住宅街にある家のひとつで、
屋根が赤いのとか、
どんな家だとか記憶はあった。
確かにこの辺りにあると
確信がありながらも、
家が見つけられなかった。
俺は親に彼女の存在を教えたり、
家に泊めたりしたことがなかったので、
親に色々と聞くことは無理だった。
かと言って、友達にも彼女を
紹介したりしていなかった。
ただ一人だけ、
彼女と俺との3人で、
ご飯を食べたことがある友人がいた。
その友人に彼女の話や
一緒にご飯を食べた話をすると、
友人は確かに覚えてくれていた。
だけど・・・
どんな子だったのかを、
どうしても思い出せないという。
女の人だったというのは
記憶にはあるけれど、
どんな話をしたかとか、
どんな風貌の子だったとかを、
全く思い出せないと言っていた。
それから一ヶ月くらい精神が
不安定な状況になって、
俺は仕事を辞めた。
部屋にあるはずの、
彼女との思い出のものも、
彼女からのプレゼントも、
何ひとつ見つけられなかった。
完全に妄想と思われるだろうけど、
彼女がいたのは確かなのだ。
2年付き合っていたので・・・
いつから付き合い始めたとかも
全て明確に記憶があるのに、
彼女の存在だけがスッポリと
無くなってしまった。
信じてもらえない話ではなくて、
妄想で頭が逝ってると思われそうなので、
身近な人には言えない話・・・
(終)