過去の記憶を失っていた女の子 1/2

山小屋

 

数年前、レンタルビデオ屋で

バイトをしていた時の話です。

 

当時、私は大学に通いながら、

深夜の時間にバイトをしていました。

 

そんなある日に店長から、

 

「新しい子が今日から来るから

色々とお世話お願いね」

 

と言われました。

 

いつも深夜の時間は人手不足で

一人でやっていて、

 

やっと寂しい時間が終わるな~

なんて思っていました。

 

「こんばんは。

今日からお願いします」

 

私より背丈が高くて、

肩に少し髪がかかっている女の子でした。

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彼女の過去に一体何が・・・

「お願いします~

 

深夜に女の子がバイトするなんて

珍しいですね」

 

「自給に惹かれちゃって・・・」

 

そんな他愛のない話を数日していました。

 

バイトの時間は人もあまり来なくて、

暇だったからよく話していました。

 

いつしか付き合うようになり、

彼女が私に言ってきました。

 

「私、一年前まで病院に居たんだ。

 

道端に倒れていたらしいんだけど、

記憶が無いの。

 

子供の頃の記憶も・・・

なんで倒れていたのかも・・・」

 

「病院で目が覚めた時には

今までの記憶が無かったってこと?」

 

「うん。

名前は分かったんだけど、

 

何処に住んでいたのかも、

家族のことも分かんないの・・・」

 

彼女は泣きそうになっていました。

 

「そうなんだ・・・

警察とかには言ってないの?」

 

「病院に居た時に勧められたけど、

 

何故か分かんないんだけどね、

探す気になれないんだ。

 

もちろん今も・・・」

 

私は、

 

家族に会いたくない過去でも

あったのかな?

 

なんて思っていました。

 

「まぁ、楽しい思い出は

これから作っていってさ、

 

家族の事とかは、

会いたくなったらでいいんじゃないかな」

 

空気が重かったので、

私は軽く流して別の話題にすぐ変えました。

 

ある日、一緒に家で寝ていた時、

彼女が突然起き上がりました。

 

「どうしたの?」

 

「なんか、夢?っていうか、

頭に浮かんだ」

 

「何が?」

 

「昔のこと。

病院に居た時より前のこと」

 

「ほんと?何が浮かんだの?」

 

私は楽しみな顔で訊きました。

 

「よく分かんないけど、

山の中でね、私、走ってるの。

 

私の前にも誰かが走っていて、

私その人を追いかけているのかな?

 

それでね、

私の前に走っていた人が突然倒れたの。

 

そこで頭の中がぷちんって切れて、

夢みたいなのが終わったの」

 

「なんかよく分からんな・・・

何処の山とかは分かんないよね?」

 

「分かんないよ・・・

山なんて何処も同じような感じだし」

 

その日はあれやこれや話して疲れたので、

そのまま寝ました。

 

次の日、私はバイトに行っていて

暇な深夜の時間に入り、

 

ぼーとしていると電話が鳴りました。

 

「私だけど。今いい?」

 

彼女からの電話でした。

 

「暇だからいいよ。

お客来たらすぐ切るね」

 

「うん。

 

さっき寝てて、

また夢みたいなの見た。

 

何か暗い木の部屋に居てね、

私の他に4人の人が立っていた。

 

また4人とも突然倒れて気が付いたの」

 

「何だろう。不思議だね。

2日も連続で見るなんて」

 

「何か思い出していくのが怖いよ」

 

彼女の声は震えていました。

 

「大丈夫だよ。

疲れて変な夢を見てるだけだと思うよ。

 

昔あったことじゃないかな。

あっ、お客さん来たから切るね」

 

「あ・・・うん。ありがとう・・・」

 

彼女はどこか悲しそうな声で言い、

電話を切りました。

 

朝にバイトが終わって家に帰ると、

彼女が「お願いがある」と言ってきました。

 

「昨日あれから寝れなくてずっと起きてて、

また頭に過(よ)ぎったんだ」

 

「夢の続きみたいなやつが?」

 

「うん。

起きてたから絶対に夢じゃないよ!

 

それでね、

山の場所が分かったの。

 

それで今からそこに行きたいの」

 

新幹線に5~6時間乗り、

何回か乗り換えて山がある場所に行きました。

 

私は新幹線の中で寝ようとしたのですが、

不安めいたものがあり寝付けませんでした。

 

「うん。絶対ここ」

 

そう言って、

彼女は山の中へ進んでいきました。

 

山の中には、

小屋の跡地みたいなものがありました。

 

燃やされたような感じでした。

 

「何か思い出した?」

 

「う・・・ん。何も思い出せない。

でも多分、この小屋に居たと思う」

 

「途中あった宿に泊まって、

何か思い出すまで待つ?」

 

「嫌!!絶対嫌!

こんなとこに居たくない!」

 

彼女は突然怒鳴り出し、

私を突き飛ばしました。

 

「あっ、ごめんなさい」

 

「疲れているんだよ。

もう帰ろう・・・」

 

私は彼女の肩を抱きながら山を降り、

家に帰りました。

 

しかし私も何故か、

この山の近くには居たくありませんでした。

 

私はその日もバイトだったので、

 

彼女に「よく寝なよ」と言い残して

バイトに行きました。

 

バイトから帰って家に着いた時、

彼女は家に居ませんでした。

 

携帯に電話しても圏外でした。

 

私は心配しましたが、

 

一晩寝れていなかったので

倒れるように眠りにつきました。

 

その日、

私も夢みたいなものを見ました。

 

(続く)過去の記憶を失っていた女の子 2/2

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